ここはどこだ?
沖縄か?
いや
瀬戸内の島のようだ!
そこへと今
船で向かっている
目的は?
そうだ
先立ったあいつの代わりだ
青い鳥 復活ライブと
ポスターがある
隣には
ポッチャリした若者が座り
さっきから
甘いお菓子を頬張り
その匂いが邪魔だ
どこから? と
尋ねてみた
僕は
北海道からだと微笑んでいる
やっと会えるね! と
これまた微笑んで
貴方は? と返す
僕は
先立ったあいつから
その間際に預かったチケットで
代わりにと返す
へ〜 そうですか
それじゃあ
さほどお好きなわけでは…
そうだね
確かにさほどではないが
まったくでもない
知っているのは
統一教会の問題と
それから
それから… くらい
もちろん
今回は
あいつの代わりに
いや
心の中に
あいつを連れて…
それは
最後にあいつが
幸せの青い鳥は来るかな? と
僕に言ったから…
百恵よりも
淳子だったあいつ
それは
確かに僕もそうで
でも
僕はさほどアイドルには
入れ込めず
それよりも
目の前のクラスの現実の
娘たちが… だったから
船は
その島の桟橋へと着き
多くのオッサンたちと共に
上陸した
全員が男で
時折 混じる若者もいるが
皆 同世代以上
ここは? と周囲を見回すと
どうやら
こんなイベントの時だけの
無人島らしい
すれば今日は
そんなファンたちだけの
貸し切りか
会場は
目の前の傾斜を登り
高台の広場らしい
わずかに影って来たが
天気は大丈夫そうだ
仮設のステージがあり
席は天然芝で
そこへと直に座るらしいが
きっと
皆 スタンディングなのだろう
ざっと数えれば
300人ほどか
さて揃った
すると
上空からヘリが降りて来て
凄い風だ
そのヘリから降り立った彼女は
さほどファンではない僕にも
健在な美しさが分かる
ステージへと上がり
さあ
始まり始まり
🎵ようこそここへ
クッククック
私の青い鳥… 🎵
こんにちは!
ようこそ 遠くまで と
彼女は言葉にする
会場のオッサンたちは
一斉に
こんにちはー! と叫んでいる
僕は
最後列で
その光景を眺めている
おい
来たよ
おい
来てるかい? と
連れて来たはずの
あいつに声を掛ける
すると耳元で
いるよ
ありがとな と聞こえる
桜田淳子
僕らより
いくつか年上の
あの頃
皆が憧れたアイドル
僕は
淳子でも
百恵でもなく
蘭ちゃんでも
ミーちゃでもない
森田つぐみ って
同世代のアイドルだけ
ちょっと氣になっていただけ…
それもまた
遠くのアイドルよりも
決して近くなはずはないのに
さほど売れてたアイドルではない
そんな
わずかでも近い彼女をと
横目で見てただけ
さて
ステージは熱気で溢れ
アンコールも終わり
ではまた
いつかどこかでと
そして
皆 元気でねと
彼女は微笑んで
ヘリで去って行った
僕たちはまた
船乗り場へと降りて
その船に乗り込み
島を離れた
来る時に
一瞬だった
ポッチャリの若者は
イベント会場で買い求めた
多くのグッズを抱え
とても嬉しそうだ
そんなに買ったの? と問えば
ええ
あるもの全部を
2つづつと微笑んでいる
楽しむ用と
保存用だそうだ
なるほど
それは良いね! と
周りを見れば
どうやら皆が
そんな買い方してるらしい
何も買わなかったの? と問われ
ええ
代わりに来たからね と返すと
その方へと
お土産は? と…
そうだった
それは忘れていたが
すでにそれも
あいつには 渡せない
カクカクシカジカと
理由を告げれば
そうでしたか
それはそれは… と
言葉を選ぶ
するとまた
上空からヘリの音がして
なんと
その船の上に舞い降りた
えっ?
そんな大きな船だっけ? と
思いながらも
そのアイドルは降り立って
微笑んでいる
ここに
ヒロユキくんは来てるかしら…
すると
数人が手を上げた
ごめんなさい
あなたたちではなく…
そうだ
あいつもまた
ヒロユキだった
もしや? と思い
手を上げて
彼の代わりにと告げると
そうなの? と
驚いて駆け寄って来た
どうして? と問われ
カクカクシカジカでと返す
あなたは?
僕は彼の友達で
代わりに託されたと…
彼女は大粒の涙を流し
僕に抱きついた
すると
耳元であいつの声がして
ここにいますよ
連れて来て貰ってますよ と…
その言葉は
彼女にも聞こえたらしく
えっ?
どこに? と見れば
その瞬間
僕は消えて
あいつと入れ替わった
僕はその光景を
その後から見ている
どういうこと? と問えば
これこそが運命だと
彼女は微笑んで
やっとね と
抱き付いたまま
2人共
姿を消してしまった
僕はまた
自分の姿に戻り
ここにいる
その光景を見ていた
ポッチャリくん
何事ですか? と
信じられない顔をしている
僕もまた
分からない と
言葉を返す
陸へと着き
なんだったのかと
2人でぼんやりしてみるが
分からないまま
ではまた
どちらかで と別れる
僕は
いるかい? と
あいつに声を掛け続けているが
もう
何も戻らない
帰宅後
あいつの墓前に立ち
何事か分からないが… と問うと
ありがとな!
夢が叶ったと
ひと言だけ聞こえた
墓誌をと見れば
あいつの名前の横に
昨日の日付で
妻 淳子と彫られている
まさか! と思っていると
翌朝のテレビでは
元アイドル
島でのイベント後
失踪と…
またまた
不思議な夢をみた

