スタートラインに並んでいる
合図と共に
一斉に走り出した
僕は今
先頭から3番目に着けているが
後を見れば
それはそれは
大勢が追って来る
登りに
降りに
トンネルに
川までも飛び越えて
まるで
障害物競走のようだ
先頭に立ちたいが
離されずとも
近づけない
油断すれば
すぐに抜かれ
でもすぐに抜き返す
その差はわずかだけれど
そろそろ疲れても来た
あとどのくらい? と
思ってみるが
分からない
先が見えず
走っている
途中
補水場でボトルを手に入れた
喉に流し込むと
息が戻って
まだまだ
大丈夫! と思った瞬間
転んだ
痛みはあるが
なんとか起きれた
さて どうする?
まだまだ
走るのか!
それとも
リタイアか
いや
まだ 走れそうだ
先頭が見えている
大勢に抜かれたけれど
きっと抜き返せる
さあさあさあと
気持ちを入れる
その瞬間
身体が浮いて
ふわり 無重力のように
舞い上がった
重力に反発しているように
翼もないのに
飛んでいる
でも
それをコントロール出来ず
あちらこちらと振られ
立ち往生
もしや
これは お迎えか? と
上空を見れば
先立ったあいつらが微笑んでいる
そうか
いよいよか と口にすれば
まあだだよ と誰かの声がする
ならば
もういいかい? と聞いてみる
するとまた
まあだだよ と返って来る
そろそろ
疲れたよ なんて
弱音を吐けば
それはウソ! って
笑い声がする
不思議かな
どこかで聞いた声
まさか
キミもそちら側? と
突然 思い出した
叶わなかったあの頃の彼女
キミかい? と問えば
そうよ と戻る
どうして? と訊けば
うふふ と笑い声
ではまた
もういいかい? と言葉にすれば
まあだだよ と戻るばかり
そんなことを
繰り返しながら
起きてしまった
今朝はなぜか
もう霧掛かっていた
キミの姿が
はっきり見えた
まさか! と
思ってみても
もう届かないけれども…
それは
先日の片付けで
押入れから出て来た
以前
古道具屋で
これは! って思い買い求めた
キミに良く似た絵で
飾る場所が見つからず
仕舞ったまま
忘れていたもの
そろそろ
どこかに飾ろうか…


