東京駅で駆け込んだ新幹線は

浜松へと着いた

ひかり に乗ったつもりだったが
こだま なようだ

いつもなら
あっという間に通過するここも
ならばと
降りてみた

40年ぶりかと
振り返ってみるが
駅前のロータリーは姿を変え

あの日
そこにいたはずの彼女の姿もない

懐かしさは
突然 襲って来て
ならばと
あの頃 一緒に巡った場所へと
出掛けてみたくなった

レンタカーを借り
浜名湖へ
フラワーパークへ
舘山寺へ
パルパルへ
中田島砂丘へ

それから
それからと
過去を追うが
もう記憶は途絶えてしまった

彼女は
大きな会社の社長令嬢で
なのに
こんな
どこの馬の骨かもしれぬ
ダメな男が良いと微笑んでいる

釣り合うはずはないことくらい
最初から分かっていた

でも
なぜだろう?
分からない


戻ろう
今更何が? と
車を戻しに駅前へ

すると
前のバスが急停車をした

慌ててブレーキを踏み
間に合った

その瞬間
ズドン! と大きな音がして
後ろの車が
突っ込んで来た

やられた! と
思った瞬間
風景が一変した

ここは
何もなかった
あの日の駅前ロータリー

おや?
助手席で
彼女が微笑んでいる

僕は
いつかこの駅前で
メンズクラブという雑誌に撮られた
アイビーの姿

戻ったのか?
時空が歪んだのか?

ところで車は?

大丈夫だ
でも
あの日 借りた
ファミリアに変わっている

ねえ
中田島へ行こう! と
彼女が微笑んでいる

あっ!
そうだね と
慌てて口にする

そうだ
ここだ

もしや本当に
時が戻ったのならば
ここで
なんとかすれば
別れは来ないかもしれない

でも
それでは
未来が変わってしまう

このまま
あの日のまま
この先に待つ
多くの壁に体当たりして
木っ端微塵か

それとも
神様は
もう一度チャンスを下さったのか

ならば
今とは 別の道へ

いやいや
今への道でないと…

彼女と別れ
その後
家族を持って今がある

さて
どうする?

さあ
どうする?

困った!

いや
困らない

別の未来は要らない
今でなくてはならない

わずかに葛藤して
びっしょりと汗をかき
目が覚めた


寝起きに
あちら側を選んでいたら
どんな今になっていたのかと

もしや
3代目の社長だったかな?

それとも
まだ
専務かな?  なんて
思ってみるが
分からない



それよりも
彼女は元気だろうか?

きっと
イカした
ババアになっているはずと
苦笑いしてみるが
もう届かない