茅ケ崎の駅で降りて
ラチエン通りを烏帽子岩へと
30分ほど
てくてくと歩くと
かつてそこにいたはずの
小説家の邸宅が見えて来る
今まだそこは
暮らしたまま多くが残されていて
時折
展示を入れ替えては
全国から
全世界から
多くのファンが訪れている
今年もまた
今年度の会員証が届き
僕の中では
今まだ 開高さんは健在だと
改めて心してみる
物心ついた頃
出会ってしまった
遊びの天才
書物はその後に付いて来て
なるほど
言葉と格闘した小説家は
更に
魅力を増幅させた
酒と
釣りと
旅と
女と…
そのすべてが
僕らのバイブルとなり
背伸びをしても
遥かに届かない場所は
イカした大人の遊び場で
いつか
辿り着けるはずと
追い掛けてはみても
更に加速したその後ろ姿は
ある日
急ブレーキと共に
去ってしまった
その後
片っ端から
残した多くを集め
出掛け
読み漁り
年齢を越した今ですら
追い越すどころか
追い付ける気配すらなく
今まだ
その背中の氣配を感じながら
遥かに高い茨の崖を
足元に氣を付けながら
1歩づつ登ってみるが
どうやら
この人生では
近づくことすら難しいようだ
早いもので 37年もが過ぎて
存命ならば
95歳
どんなものを
残してくれたのだろうか
さてまた
そろそろ出掛けてみるかな



