夢に
思わぬ奴が現れると
どうした? と
心配にもなる

2人で
走る列車の屋根上に乗り
必死に掴まっているが

直角に? 曲がった瞬間
あいつが振り落とされた

線路は山の尾根を通り
遥か下は断崖絶壁

落ちて行くあいつの姿は見えるが
どこまで落ちるのか分からない

さてどうする? と思う間もなく
救わねばと
僕も飛び降りた

追い付くかな?
追い付いたら良いがと
思っていたら
蜘蛛の巣のようなネットに
引っ掛かった

あいつは?

あいつも近くで
引っ掛かかっているが
気を失っている

おい!
大丈夫か?

あっ!
大丈夫みたいだ

良かった!

で ここは?

分からないが
落下中
ここに引っ掛かり止まった

列車は?

遥か上だが
もう見えない

さてと思っていると
上からロープが降りてきた

そして
何か声が聞こえる

おーい!
大丈夫かあ!
そのロープに掴まり
上がって来いよお

誰だ?

分からないが
有り難い

早速 登り出したが
霧掛かって何も見えない

それでも
上へと目指すが
そろそろ疲れても来た

ダメだ! と
あいつは言う

ならば
下へと降りて
身体をロープへと結んでおけ
先に僕が登り切り
上から引き上げるから
待っていてくれ!

分かった

僕は上へ上へと
登って行くが
なかなか辿り着けない

その内に
ロープの色が白から赤へと変わり
赤から緑へ
緑から黄へ…

そうだ
ここは虹の中

もしやここを渡ると
次の世界か

でもまだ
先があるようだ

そう思っていると
僕のすぐ下で
ロープが切れてしまった

あいつは? と思ったが
もう届かない

ならば
今は登り切るしかない

着いた
登り切ったが
誰もいない

ここは
虹の上だ

下を見れば
そこは下界
多くの人々がもがいている

笑顔はない

こんな世の中だったのかと
見下ろしながら
嘆いてみるが届かない

そうだ
この虹を下界まで下せないか?

でも
どうすれば?

このロープで中央を縛り
それを身体に巻き付けて
下界へと落下し
多くの方々とそれを引っ張れば
きっと
虹を下げられるはずと

ではと
飛び降りた

案の定
僕は無事 下界へと降りて
多くの方々を集めて
カクカクシカジカと話し
さあ
皆で虹を手繰り寄せるぞ! と
意気込んだ

虹は大きく湾曲し
その中央が下界まで降りて
その先端を大木に縛り付けた

よーし
みんな
ここへ
虹へ乗って! 
虹が消えぬ間に! と急がせ

さあ
これで全員だね

ではロープを切るよ

バシッと音がして
ロープは切れ
虹はまた元の位置へと舞い上がった


下界を見下ろしながら
虹の上で微笑んでいる

さあ
次はこの虹を渡って
向こう側へと

すればきっと
美しい世界が待っているはずと
みんなを急がせた

虹はやがて
その姿を消し始め
最後に歩いた僕で消えてしまった

そこは思った通りの楽園で
きっと次の世なのだろう



そうだ!
あいつは? 

すまん
救えなかったな と
詫びていると

目の前にひとつの扉が現れた
何かな? と思い
その扉を開けると
あいつが立っている

おお!
良かった
心配した

早くこちらへと
手を差し出すと

ダメだ
そちらは 天国だ

オレは
そちら側へと行く資格がない

どうしてだ?

若い頃
さんざ悪さをしてしまった

そうだったな
でもそれならば
僕も大して変わらない

とにかくこの扉を
潜ってみてくれと
引っ張ると

その扉は閉じ始め
ならば
僕もそちら側でと
あいつの側へと飛び移った

その瞬間
その扉は消えて

どこからともなく
声が聞こえた

それで良い
それで良いのだ
友達とは
そういうものだ

幸あれ と
誰かからの声

神か?
そうだ
きっと神様だ! と
あいつは微笑んで

ありがとな

いや
良かったな

そこで目が覚めた

3.11


寝起きに
あいつは? と
思ったら

そうだった
あいつは
この 3.11で
もう38年にもなったのだった



すればもしや
虹へと乗せたのは
3.11での方々だったのか? と

身震いしながら
ふと思ってみるが
分からない

夢は通い道というが
昨晩
あいつが 

来たのかなあ…