八重桜が満開で
とても綺麗だが
なぜか
ドキドキしている

ここは
練馬の師匠の家の前だ

向かいのスーパーに
勝手に車を止めて
談志師匠の家の門まで来た

インターホンは? と見れば
ない

さて困った!

玄関まで行くか?

仕方ないが
そうせねばならないと
八重桜を見上げながら
そろりと入る



玄関にも

インターホンがない
ドアを
ノックせねばならないのか?

トントン と叩いてみた

返事がない

もう1度
トントン と…

すると
だれー? と
奥の方から声がする

今 忙しいから
そこ開けて入って来いと
聞こえた

えっ? と思ったが
言われた通りにドアを開け
中へ…



するとそこから
別世界

何やら
空間がゆがみ
プラーナたちが
大きな粒で左回りしながら
こちらへと迫って来る

あっ! と思った瞬間
呑み込まれた

すると
身体は浮き
軽く心地良い

そのまま
奥の書斎へと連れられ
ドン! とソファーに
降ろされた

目の前には
厄介そうな顔をした師匠がいる

お前
何しに来た? と問われ

弟子に
弟子にして下さいと
頭を下げた

すると
これまた厄介そうに
お前みたいな連中が
毎日毎日
履いて捨てるほどやって来る

帰んな!
弟子は取らない
もう2度と来るなよ! と
面倒そうな顔をする

いや
その
僕は煎餅屋の店主からの紹介でと
手土産の煎餅を差し出す

なに?
煎餅屋か!

じゃあ
しょーがねーか!

まあ良いや
そこらにいろ! 

ってなわけで
弟子となった



翌日
八重桜を見上げながら
庭の掃除をしていると

また
弟子になりたいという男が
入って来た

おや?
あの姿は
志の輔師匠か?

今日もまた
昨日の僕のように
書斎から声がする

まあ良いや
そこいらにいろ! 

あれ?
まさか
1日違いで
志の輔の兄弟子となった


師匠は
とても忙しいわりに
寄席へと向かうのは
いつも電車で

僕が
大きなカバンを背負い
志の輔が
先を先をと
切符を買い 道案内をする

兄弟子たちは? と見れば
すでに全員
破門されたようだ

聞いてはいたが
やはり
厳しいようだ

少しして
また次の弟子を取った
談春だ
志らくだ


お前たち
良く修行に耐えた

先日
落語協会を抜けた

これからは
我々だけで活動するから
寄席には出れない

全員
二つ目を飛び越え
真打ちにするから
勝手にやって来い!

そんな日から
長い時が流れ

その師匠はいない

僕以外の3人は
それぞれか弟子を持ち
一線で活躍している

僕は…
僕はきっと
売れないと思ったのか
名を残すことなく
家庭を持って子育て中

たまに
客席で
そっと彼らの姿を追い

その弟子たちに
待ってました! と
声を掛けている

彼らの師匠たちの
兄弟子だったことを
知らすことなく…

そんな
ちょっと
センチメンタルな夢で
今朝は起きた

桂雀々


寝起きに
枕元のスマホには
桂雀々師匠の訃報が届き
同世代の早過ぎる時間を
切なく思っている



そういえば

昨日の立川流まつりで

若手が演じている裏側で


ピンクのオーブが

ゆらり浮遊していたのを

知っているのは

僕だけだろうか…