ニックさんが愛した
黒姫の森で1番大きな木

それは
見事な大木で
季節ごとに
違う姿を見せてくれる




その コナラの木を
マザーツリーと呼んで
ここにと
語ったあの日は遠く

今 その遺言通り
その根元に眠っている

いや
きっと眠ってなんかいずに
森の中を飛び回っているのだろう



会いたい人は
いつも遠くにいて
会えないから恋しくもなる

そろそろまた
飛んで行きたいけれど
仕方なくも黒姫は遠く

夏の終わりに間に合うか
それとも
秋まで待とうか
酒は何にしようか なんて

いずれにせよ
この晩秋には
そのマザーツリーのどんぐりを
沢山 拾い集めて来て

そろそろ本気で
次の世代を
準備せねばならない


♯592


昨今のナラガレによる被害は
全国に広がっていて
この大木もまた
防御はしているが
守り切れるか分からない

もちろん財団でも
その準備はしているけれども
このマザーツリーだけは
更にと 心せねばならず

100年後に
枯れ落ちたとしても
隣に同じ姿の大木を配置し
メモリアルストーンを守りたい


家族に頼んであることがある
ひとつは
僕の骨壷に
そっと
ぱふを混ぜてくれと

もうひとつは
この森のここに
わずかでも散骨してくれと

それだけで良い
そう
それだけで良い


そうそう
このマザーツリーの根元にも
わずかに散骨したそうで

ならば
秋に落ちるどんぐりにも
ニックさんは宿っていると
思っている