庭のハス鉢を覗き込んで
今年もまだ
花は咲いてくれないかなあと
思案していると

2匹の蜘蛛が現れて
先日は
ありがとうございましたと言う



えっ? と返すと

この前の豪雨の時
そこでは
せっかく張った巣も
流されてしまうだろうと
傘を備えて下さいましたね

ああ
あの時の蜘蛛さんか
突然の豪雨だったからね
でも
無事で良かったね と返すと

もう1匹の蜘蛛は
私は
ここは危ないからと
車通りの多い道から公園へと
それから
迷い込んだ風呂場からも…
連れ出して下さいましたねと言う

ああ
あの時の…
無事で良かったね

ところで
今日は何か?

蜘蛛の糸


ええ
昨年から
また種から始めた古代ハス
今年は咲くと良いですが

水面下をよーく覗いてみて下さいな
あの
カンダタが地獄の池で
もがいてますでしょ?

ああ
そう言われれば見えて来た
確かに…

きっと
カンダタがもがいてるせいで
ハスの生育が遅れてるのかと…

なるほど
ではどうしたら良いかな?




あの日
お釈迦さまに言われて
糸を垂らしたのは私なんですよ

でも
カンダタは自分が自分がで
糸が切れて…

そうだったのか
ではもう1度垂らしてあげたら良い

いえ
それは出来ないんです

お釈迦さまもまた
次のチャンスをお与えには…

ならばこうしよう
僕がキミの糸を辿って降りて行き
カンダタに説明してみよう

もしも心が入れ替わっていたら
その糸を辿って
また昇って来れるようにしよう

では行くよ と
まるでヘリコプターからの
山岳レスキューのように
僕は降りて行った

もがくカンダタの直前で止まり
カクカクシカジカ
もう1度チャンスをと話すと

わかった
ありがてえ!
頼むと言い
僕の下から昇って来た

ところが
これまた細くたわむ糸
2人にもなると
やはり頼りなくもなる

ゆっくり
静かに昇れよ と話すが

聞く耳を持たずどころか
上の僕を乗り越えて
さっさと上がって行った

こりゃまずい
それではまた同じことではないかと
下から叫ぶと
カンダタは笑い
自分の下で糸を切ろうとしている

おい よせ! 
それではまた… と叫んだところで
僕は地獄の池へと落下

かと思ったら
もう1匹の蜘蛛が
咄嗟に糸を飛ばし
降りて来てくれ僕を掴んでくれた

助かった!

上を見れば
カンダタはすでに水面近く

その更に上から
覗き込んでいるのは
お釈迦さま

カンダタ
残念だ

そう呟くと
糸は切れて
カンダタはまた
落ちて行ってしまった

僕もまた
残念だと呟き
地上へと戻った

お釈迦さまには
勝手をするなと
叱られたけれども

すぐに微笑んで
どんな小さな命でも
皆 同じ価値があると呟き

そのすべては
奇跡的に辿り着いものだと
更に説く

それよりも
僕のハスは
今年咲いてくれますか? と問うが

さて どうかな… と

話をそらして
お釈迦さまは微笑んでいた

蜘蛛の糸


特に
ぱふを失ってから
命について深く想うようになり

攻撃してくる連中以外
蟻1匹 
命を奪うことなく過ごしている

更には
突然 見え始めたオーブたち

本当のことは分からないが
きっと
僕らの行く先々の姿なのだろう

そして
彼らはきっと
この世に戻るのを
待っているのかもしれない

それもまた
次は人間なのか
それとも犬なのか
虫なのか… なんて

そんなことを思うと
僕は今回が初めての人間なのだろう
まだまだ慣れず
還暦を越したというのに
今まだ悩んでいる

すれば卒業の頃

きっと単位不足での落第点となり
また
おぎゃー! からの
フリダシかな? 


それとも

犬かな 虫かな? なんて
苦笑いしながら

目の前の命
守れるのならば
守ってあげたくもなる

今朝は

そんな夢で起こされた


♯549


このお釈迦さま

デーモンっぽいね! と言われたけれど

なにか?…   笑