永さんの墓前では
いつも1人で

そう
命日とあれど
ついさっきまで
どなたかがいたと
線香は燻ってはいるが

それはきっと
永さんの粋な計いかと
いつも思っていた

それが本日は
すでに先行者がおって
尋ねれば
永さんのラジオのプロデューサーと
そこへと
毎日 ハガキを出していたそうな
熱狂的なファンの方

2人は
一緒に来たらしく
笑顔で
お先にどうぞ! と微笑むけれど

いえいえ
ならば
ご一緒させて下さいと
花を備え手を合わせた

その
ごく近かった方々は
なかなか楽しい話をして下さり
これまた墓前での長話となった



永さんは
蘭は嫌いだと仰ってたそうだけれど
娘さんに訊けば
本当は蘭が1番好きだったそうで

そのプロデューサーは
仕方なくも蘭を1本
花束へとと笑う

そう
そんな高価な花などと
きっと
永さんは見栄を張ってたのだろう

永さんのことだから
バレたかと
今頃 この下で笑っているはずと
プロデューサーは微笑んでいる

いつもの年ならば
備え切れないほどの花で
埋め尽くされてはいるが

なんせ
この暑さ

そして
すでに年寄りばかりだから
自分の身体を優先したはずと
ちょうど
永さんと同い年となったと
これまた
そのプロデューサーは笑っている

まずはお元気で
そして
また
どちらかでと
失礼したけれど

年々 
永さんを知る方々も減り
また
年齢により
墓参もまた大変にもなる



人は
2度死ぬと言う

1度目は
肉体の死

2度目は
忘れ去られる死

忘れないことが
唯一なのだろう



しかし 永さん

この方々に合わせてくれたのも

もしや

粋な計いだったかな…


ありがとう