帰宅すると

サナギが動き出していて
それに気付いて
眺めてはいるが

蝶になるのは
あとどのくらいなのか
分からないから
観続けるのは難しい



しかし
ここに避難させた時
おい
頼むよ
僕がその姿を確認するまで
飛び立たないでよ なんて
声を掛けている

もしも
その言葉が伝わっているのならば
きっと待っていてくれるだろうと
勝手に思ってみる



気が付けば
もうひとつの
アロエの葉にいたやつは
姿を見せず
すでに飛び立ってしまったらしい

ならば
お前は
それは今夜か
それとも明日の朝か

いやいや
もうすぐなのか

たかが 毛虫
それも
花壇のパンジーを食い荒らす毛虫

それでも
ここまでたどり着いた命
無事に成虫にさせてあげたいと

毎年毎年
こうして花壇の花を眺め
毛虫はいないかと
微笑んでいる

そして
その花の命と交換に
毛虫たちは蝶になり
次の命へと繋ぐのだろう



そう
僕たちも同じように生きている
日々
肉を野菜をと
命を頂き生きている

ならば
その恩
何処へと返さねばならない

繋ぐ命もあれば
託す命もある

その命
今 落とすことはない…