我が家の草津の宿は
リゾートマンションってやつで
バブルの頃
親父が大枚を叩いて
小さなワンルームを買ったもの

それは12階建の2階で
おそらく当時
1番安かったであろう部屋で
それでも
着工前のカタログだけで
即完だったようだ




そう
基礎工事中に
連れられて見に行ったのは
35年も前のこと

親父たちは
そこを起点に山へと猟に入り
猟犬と共に鳥や獣を追った

それも孫が出来た頃
銃はカメラに持ち替えられて
山の景色や
滝の風景をと
慣れた山奥まで足を運んだ

その後
孫たちがスキーを始めると
一緒に滑りたいと
古希を過ぎてから
スキーを習い

春夏秋冬と
1年を通して草津へと出掛けた

やがて
バブルは弾け
マンションの価値は落ち
安い部屋が売りに出された

ならばと
15年ほど前
僕がワンルームから
2LDKへと買い替えた



しかし
その頃には
親父たちも遠出が億劫になり
また
僕たちも
そうは出掛けることなく
年に数回だけの草津となり
そこへと掛かる費用ばかり

そう
毎月の高額な管理費に
固定資産税
更には草津町の町民税までも…

部屋は大したことはないが
さすがにバブルのど真ん中に建てた
12階建のマンション

当時の贅沢を尽くしたほど
その綺麗さは健在で
更には
近隣のホテルよりも遥かに広い
温泉掛け流しの大浴場まである

地下には
スキーの乾燥室や
コインランドリー
自販機… なんて

最上階は
もちろん億ションだったらしく
多くの著名人たちも
所有していた

308世帯もの
巨大なマンションは
すでに需要も減り
安価で取引されているが
いつ来ても管理が行き届いているから
マンションというものは
やはり
来る度に掃除からの
戸建ての別荘よりも楽なのだろう

愛人と別荘とは
持ってから苦労すると
いつか先輩方が笑ってたけれど
個人ではなく
一族で持つならば
この立地ならば良しとなる

なんせ
日本1の温泉が
24時間 いつも掛け流しの大浴場

真夏でも涼しく

クーラー要らずの高原気候

信州や
その先まで足を伸ばすならば
ちょうど良い中間の立ち寄り地

草津温泉の宿は
相変わらず お高く
お隣のホテルなどは
1泊 数万円から也…

なんて
言い訳をしながらも
なんとか今まだ
持ちこたえてはいるが

はてさて
息子の代には
それはと… すら思う

温泉らくご


いつの頃からか
草津での楽しみは
落語にまで増えて

そう
芸協の若手たちが
湯畑前の湯もみ会場で
365日 毎日 
落語会を開催している



観光客が温泉宿で
風呂に入り
食事をし
さてと思った所で
浴衣姿で下駄履きで
湯畑周辺へと散策に出る

そこで
湯もみが終わった会場を使い
20時開演となる落語会

ならばと
ぶらり入ってみる お客様

初めて落語を観る方が多く
若手の噺家たちもまた
楽しい噺を掛けてくれる



その広い会場は
1階席と2階席とあり
満席では立ち見となり
団体が入れば
200人くらいにはなるけれども
大抵は20人くらいなのだろう

真冬の雪降る夜では
1人なんてこともあったそうだ

終演後
手拭いや扇子の販売と
もちろんサイン会まであり
これもまた
草津の名物となったようだ

基本的には
二つ目だけの寄席ではあるが
時折 真打ちウィークもあって
真打ちたちは
ホテル泊まりとなるが

しかし
二つ目たちは
ホテルではなく
リゾートマンションの
ワンルームだと聞いていた中で

それがまさかの
同じマンションで
更には
我が家の真下の部屋で

そう
彼らが2階
我が家が3階

ならば
終演後
おいでよ 一杯やろう! って
お誘いすることがあって

週末に行けば
若手たちと

部屋で一杯なんてことばかり



偶然は
その先の偶然をも呼んで
おかげで仲良しな若手たちばかり

しかし
真打ちになれば遠ざかるから
そのお祝いまでとなり
その先を追うほど野暮ではない

応援するからには
もちろん売れて頂きたい

そろそろ
どなたかが頭ひとつ
世に出る頃かと
楽しみにしながら…



草津良いとこ
1度はおいで
どっこいしょ


喜太郎