長野の善光寺には
お血脈なるお札があって
それを授かった者は
即座にこの世の罪が
すべて許され
綺麗な身体となって
極楽浄土へと行けると
そんな噂は
遥か昔
江戸の頃からあって
当時はお札ではなく
額にハンコを押されての
罪障消滅だったらしい
それはこの令和にもまだ
そっと伝わっており
知る人ぞ知るで結構とばかり
どうぞどうぞと授けることなく
そっと
善光寺ではなく
その左手の小さな場所で
お血脈をとお願いしてこそ
授かるような…
黒姫の帰りに立ち寄ったのは
善光寺
目的は
あいつらへのお血脈を頂きに
そう
皆 無事に還暦を越し
ならば
このまま一緒に年寄りになりたいと
健康
安全
安定を願う
すれば
その先も一緒にと
極楽浄土へもその仲間たちと
ってなわけで
特に
ガキの頃
悪さしたあいつらには
この世の罪を消す お血脈を
渡しておかねばなんて…
それももう
いくつ授かって来たことか
若手の罪多きそうな
噺家たちにもお配りしたし
先立ったあいつらの棺にも
そっと添えたりもした
これで
先立った奴らは皆
極楽浄土にいるはずで
僕のその日には
きっと三途の川の向こう岸まで
迎えに来てくれるだろう
ならば
待ちわびたぜ
ちょいと遅かったなと
笑われるくらい
もう少しこちら側で
孫子たちと微笑んでいたい
そんな
あれもこれもと
空想などしながら
昨日もまた
お血脈をお願いします なんて
受付の方に一礼などして…




