年に数回
ニックさん
持って来たよ! と
酒を備え手を合わす
今回は
クラフトジンで献杯
ニックさんは
いつもあなたが来るのを
楽しみにしてますよ なんて
財団のスタッフたちは微笑んでくれる
酒なくして
人生はないと
笑っていた大男を思い出し
僕もまた嬉しくなる
さてしかし
昨日はなんと
マザーツリーが
ビニールシートで覆われていて
どうしたの? 状態
早速
いつものスタッフに訊くと
この森にも
ナラ枯れが起きたと
そう
カシノナガキクイムシなる害虫が
ナラの木を食い潰すと
この森でもすでに2本やられ
切り倒したばかり
それに気付いたとき
それがマザーツリーでなかったことが
まずは救われたと
ならばもちろん
ニックさんが愛した
1番大切な木
なんとしても守らねばならない
そこで
しばらくは
こうしてバリケードを施したと
しかし
今後 もしものことがあったならば
我が家で発芽したそれをと提案すると
もちろん
財団でも準備してあると言われ
安心した
マザーツリーは
秋に多くのどんぐりを落とし
それを守るかのように
葉を落とし包み
更にその上に雪が覆い
どんぐりを守る黒姫の環境
春先に雪が溶け
その中のいくつかは
発芽するけれども
自然環境とやらは
その多くを選別し
長い時間の中でわずか1本だけが
大木となる
それは
森を見れば分かることで
その多くが育ったならば
森はナラの木だらけとなるはずが
それを自然は許さない
多くは
落ちた瞬間
熊やリスや虫などの食事と化し
残ったそれですら
過酷な環境下で
競っての時間
ならば
加勢したくなるのは常
また
発芽したものへも
手を差し伸べたくもなる
帰り際に立ち寄った
もう
主人のいないニックさんの自宅
その玄関先で
やあ! 元気? って微笑んだ
かつての姿を想像しながら
佇んでいると
階段下に
いくつかの
発芽したどんぐりを見つけ
ならば
僕にまかせて下さいと
2本ほど預かって来た
たかが どんぐり
されど どんぐり
こんなことが
どなたかの心に伝わり
わずかでも残ってくれたならば
僕のいた時間もまた
救われるような気がして…
鳥たちは巣立ち
多くを囀り
樹々は風に揺られ
光は緑を更に輝かせる
森は健康を取り戻し
僕らもまた
そこで救われる







