正やんが
フライフィッシングに夢中だそうだ
そうだ
かぐや姫の
風の
なごり雪の
22歳の別れの しょうやんだ
ならば
いつか川で
渓流でお会いしたいなんて
すれば
きっと僕の方が
経験値は少しは高いはずで
そしたら
正やんと気付いても
気付かなかったふりして
友達になりたい
ならば
まだ見ぬであろう川に
こんな所に? なんて
奥の奥へも
案内出来るのに…
そんなことを
先日 手に入れた
古い雑誌を見ながら
物思いにふけてみる男
そろそろ
出掛けてみようかな
春の里山の渓流に…
正やん いるかな
会えると良いな
フライフィッシングという
ジェントルな遊びが
この国に入って来たのは
大正の初期
それは
奥日光の湯川だと聞いた
イギリスの外交官たちが
この国には良い川があると
トラウトを放流したのは
湯の湖から中禅寺湖の間の
戦場ヶ原を流れる川で
そこにはかつて
多くのイギリス紳士の姿が
あったのだろう
しかも皆
ツイードのジャケットを羽織り
タイを締め
まさに正装した姿で
魚たちと勝負したのだろう
釣りの師匠
いつか
昔
出会った美術館のお爺ちゃんは
その生き証人で
私は中禅寺湖畔のホテル出身で
多くのイギリス紳士たちを
案内したと
あの頃の湯川は
多くの魚と
わずかな釣り師たちとで
まさにイギリスだったと
懐かしそうに話す姿を
今も忘れられない
その美術館の閉鎖を聞いて
ならば最後に
その湯川へとお誘いしたけれども
私にはもう
あそこを歩く体力はない
そして
毛針に糸を通す視力もないと
寂しそうに語ったから
ならば
それらは
すべて僕がと話したけれど
叶わなかった
そんな日から
30年もが過ぎて
時折 出掛けてみる湯川では
かつてそこにいた
そんな頃の
紳士たちの姿を想像しながら
竿を振ってみると
この国にいたはずもない
綺麗なイギリスの魚たちが
今もまだそこで泳ぎ
世代を未来へと繋いでくれている
そう
湯川はすべてが
キャッチアンドリリースなのだ
持ち帰らなければ
魚は残り 増えて
川もまた蘇るのだ
さてまたそろそろ
出掛けてみるかな湯川
あの頃のお爺ちゃんの姿を追って…
若者たちよ
家で
バーチャルで
燻ってないで
出掛けてみよう
幸せは歩いて来ないのだ
探しに行こう








