新たなグレープのアルバムに
録り直したあの頃の曲があって
なんだか
時の流れと共に
違った曲に聞こえ
それはきっと
時代と
齢と
世の中とが
様々に混ざり合い
思いもしなかった化学反応を起こし
受け取る僕らも
演じる彼らも
それを感じながら
それぞれが歩いて来た道のりの中で
乗り越えた酸いも甘いもを
そこに重ねながら
味わうものなのだろう
本日
いつもの寄席へと
出掛けた神田
上野で降り
ちょっと歩いてみようかと ぶらり
ならば
目と鼻の先
あの日の無縁坂はと
確かめるように向かってみた
左手のレンガの塀は
僕の記憶のあの日のまま
佇んでいたが
向かいのお宅は皆
マンションと化してしまった
時の流れ
更に残念なのは
看板は黒地に白文字から
白地に黒文字へと変わってしまった
その道標
ここは
森鴎外の雁の舞台で
多くの文豪たちもまた
通り過ぎたはずの坂
曲中に
しのぶ
しのばずとあるので
不忍池近くのここと思っていたが
どうやら本当は
長崎の
聖福寺の大雄宝殿横の坂らしいと
いつか聞いた
それで
昨年の長崎では
その場所を確認せねばと
うろうろした男
半世紀もの時間が経ち
多くのものは変わり
姿を消し
姿を表す
かつてそこにいたはずの方々は
すでになく
坂道だけが佇んでいる
時は過ぎ
過去からの残り香は
残された歌や書物によって
未来の方々に手渡される
人間たちの良いところは
姿を残さず消えることだというが
坂や
壁や
建物などは
変わりながらも残っていくのだろう
また100年もしたら
今の人々のすべてが
入れ替わるというのに…





