時折
思い出したかのように
懐かしい曲を掛け
ひとり
黄昏れることがある
すると
そこへと重なる風景が見えて
自ら入り込み
目頭は熱くなり
勝手に涙ぐむ
それを感涙と言うそうで
過去の人生経験が
辛かったほど大きく戻り
特に夏の
特に海の
特に彼女との
特にさよならの場面には
身震いし
鳥肌まで立ち
ため息と共に蘇る
遠く
彼女の街の
砂丘から西へと続く砂浜で
まだまだ
荒らされることのなかった海は
多くの海鳥たちが舞い
カニやヤドカリたちは
砂浜を歩き回り
それを追い掛けて
戯れた若さ
でも
間近に迫った
さよならの時間を
誤魔化すように
無理に微笑んで
振り返らず
裏腹に
強がりを言った若さ
そんな場面は
いつかの曲と重なって
生涯 大切なものと化した
数年前
通り掛かった東名で
ならばと途中下車し
40年ぶりに足を伸ばしたそこは
スーパー堤防とやらに支配されて
記憶の場所はなく
一気にその記憶すらも薄れ
残酷な時間の流れを
恨むでもなく
嘆くでもなく
悔やむでもなく
ひとり佇んで
鳥もカニもいない海で
打ち返す波だけを見ていた男
するとやはり
頭の中で
この曲が流れて…
どにかしたいが
どうにも出来なかった頃
それを
振り返ることしか出来ない今
この生命尽きるまでには
またどこかでと
わずかに願ってもみるが
それはもう
叶わないのだろう
そう
叶わない方が良いのだろう

