困ったことがあったらな
風に向かって俺の名前を呼べ! と
寅さんは満男に残した



寅さんは
ずっとここにいて
一昨日のテレビでまた

寅さんに会いたくもなって
出掛けた柴又




ここを歩くと
そのどこにでも
寅さんの足跡は残っていて

いつもの高木屋さんへと入り
ダンゴとお茶とで
黄昏てみたりする




特に
もう会えないと思っていた中での
お帰り寅さん には

満男と重なる多くがあって
まさか
僕には
こんな叔父さんはいなかったけれど

こんな
名前まで同じな彼女がいて
更には
こんな成田での別れまでもが
還暦にもなった男の心を
今頃 揺さぶり回す

ならば
満男のような作家にでもなって
サイン会で再会出来たらなんて
夢のような妄想を抱いていたら

なんと
今朝は
そんな夢まで見てしまった






お互い
すでに還暦ならば
取り巻く環境はもう越えた頃だろう

今更なんて言葉を吐いたのは僕で
それでもなんて
答えたのはキミで

35年前
取り巻く環境に呑み込まれた関係は
海を飛び越えて
僕らの中でだけ
大きな物語を残した

会いたいですか? と訊かれたら
もちろん と
今なら答えられる

そして
もし偶然でもそんな場が出来たなら
すべては時効
もう
波風は立たないはずと
笑って会える

軽くなって来た残りの時間
次の世への宿題よりも
現世での答え合わせが
どうやら欲しいようだ…



でね

柴又も大きく様変わりしていて

只今

こんな工事中










寂しいですが

時代の流れで

仕方ないのでしょうか…