寅さんを失って
長い時間が過ぎた

ロスとは言っても
我が家の棚にはそのすべてのDVDが並ぶから
いつでも寅さんはここにいる

しかして 
毎年 お正月に会えた新たな笑顔から遠ざかって なんだかその寂しさすらも 薄らいで来た今日

それはまた ここに
戻って来た


僕ら世代は 
やっぱり寅さんなんですよ

お帰り 寅さん なんて映画が出来たと聞いて
それは いつ公開? なんて
待ち望んだ今日

朝1番の会へと急ぎ足

まばらな席には
やはり 僕ら世代以上の方々が座り
どなたかを連れ立って と言うよりも
1人でな 姿の多さ

皆 きっと 待ちわびた時間と
ここまでの人生とを
沢山 混ぜ合わせた感情を
どなたにも邪魔されずにと
そっとそこに座ったのだろう







もちろん僕も
カミさんを連れ立ってではなく
あれこれと過ぎて来たことを
ひとり 自分の中でだけ処理したかったのかもしれないわけで

時折 映る回想シーンの中で
あの日の 寅さんは
あの日のまんま 生き生きと語り

何度も何度も何度も
涙が出て
やっぱり 遠慮なく泣ける
ひとりでという その席をキープ出来たこと

わずかながら 寅さんとの
本当の別れだったのかもしれませんね


新宿の 世界堂へと
画材を買いに出掛ける度
素通り出来ずに立ち寄る場所があって。。。

ビルの谷間にひっそり佇む墓石には
寅とも 渥美清とも なく
田所康雄 とだけ刻まれ
それでも 花は途切れることなく備えられ
あれこれと思う

勝手に手を合わせると
あんた 時々 そうやって来るけれど
ここは 寅でも 渥美のでもないから
さっさと お帰んなさい なんて
毎度 怒られた気がするわけで。。。

しかして
それでも 失礼ながらと手を合わせ
また来ますねと 一礼などする ただの男

10年後
寅さんの年齢に届いた時
僕は 何を思うのだろう? なんてことを
わずかに楽しみにしながら。。。