打ち上げ花火 シブゲキにて


2月某日水曜日 雨が降っていた


その前日 なかなか難解な芝居を観て


少々頭を使ってしまったワタシは


今日の芝居は気楽に笑えるだろう と


朝から とても気楽な気分で


雨の中 電車に乗って渋谷に向かったのだった


フェルメール展を観てから


シブゲキに行くつもりだったが


渋谷に着いてみたら ランチして展覧会を観るには


時間が足りなかった


まぁ 朝からお気楽モードでのんびりしていたのだから


しかたない


それでは ゆっくりランチしようと


雨の中 傘さして 道玄坂を登ったが


目当ての店は シャッターが下りていた


それでは と


東急本店の中で食べようと 本店通りへと抜ける路地へ


入ったつもりが 道を間違え 


ちとあやしげなエリアに入ってしまった


人通りの少ない道を


傘さして 何故か オドオドしながら


急いで歩く オバサン ひとり


随分遠回りしてしまったが 


本店が見えてきた 



本店も シャッターが下りていた


あれま と 本店通りをくだり


また 道玄坂方面へ


今度は 間違えずに 行けた


すきっ腹かかえた 孤独なオバサン


入った韓国料理店は 昼時だというのに


客が一人も居らず 


ちと気まずかった



何しろ 寒い雨の中あやしい道歩いて


ショウモウかつドウヨウしたから


あたたかいご飯はありがたい


お腹空ききっていたしね と


残さず ガッツリ 


食べ終わるまで 店の中は


店の人と ガッツリオバサン ふたりだけ


こういう状況じぁかえって長居できない



開演までまだ時間あるし


それでは コーヒー飲もうと


また 本店通りへ


そのコーヒーチェーン店は Sサイズを


スモールでもショートでもなく


ピッコロ という


昼時の渋谷にしては


そのコーヒー店も 空いていた


静かな店内で カプチーノ ピッコロサイズを飲む


満腹オバン 


お気楽リーラックスモード  ふたたび


さぁ そろそろ シブゲキへと


本店通りを またもや下り


始めたが 


始めたら


後ろから すみません いう 女の声


最近は意識して いかつい顔して歩いているから


人に道訊かれることなかったのに


不覚だった


ふりむかずに急ぎ足で去る 


つもりが 相手も 切羽詰っていたらしく


いつまでも すいません すいません と 追いかけてくる


観念して立ち止まったら


△△△はどこでしょうか 


しかし


あちらの方角だとしか 教えられない


ジブンでも さっき 道間違えている状態なんだから


二人ずれのご婦人は 


ひとりが ○○○の向こうだって聞いたんですけど


なんて 言ってる




たしかに △は○よりこっち側ではないけどね


このご婦人たちは あくまでも ワタシに


△へ行く道順を具体的に聞きたいらしく


ワタシを解放してくれない

 


いちど 駅のほうに戻って


左の方へ行くと判りやすいと


教えてみたが


そのご婦人たち 道を渡り 左の方ねと言いながら


駅とは反対方向へ進んで行く



まったく勝手のわからない街に来て


ヒトを煩わせながら


それでも 自己主張して


自己判断するって さすがだな



おかげで ワタシは またもや


ショウモウかつドウヨウしちまった


ドウヨウかつショウモウしちまったワタシは


なんてこと 


本店通りから道玄坂へ戻るつもりが


また 道を間違え 反対の方向へ行ってしまったのだった


そして ワタシの視線の先には


先ほどのご婦人たちが 途方にくれたように


立ち止まっていたのだった


そして もっと先には目指す△△△が見えたのだった


本店通りからセンター街に入るその道で正解なのであった


そのご婦人たちは正解だった



方向オンチのワタシより



そしてワタシは そのご婦人たちに


ご親切にも ジブンから話しかけ


あの建物が△△△ですよと


教えたのだった




そして ワタシはジブンのそういうお人よしな


性格が なによりも キライなのだった



そうやこうやで お人よしと方向オンチの性分に 


自己嫌悪に陥りながら


また来た道を戻り


やっとこさシブゲキに辿り着いたのだった



お気楽に観る はず だった 芝居は


ちょと不条理劇みたいに


謎めいていた



峯村リエさんが ツィストを踊る


カッコいい


イカす


今は イケテル というのか



腰をひねって踊るだけと思っていたが


足は華麗にステップを踏む峯村さんの


ダンスこそ


本物のツィストなのか


ツィストというものの認識が


改まった一瞬だった



ワタシがコドモの頃 大流行したツィスト


テレビの前で真似して踊ったツィストは 


峯村さんの隣で踊る大倉孝二さんのそれに


限りなく近かった





それがツィストだと 思い込んでいた


○十年間を



返せ



方向オンチとお人よしな性格も



なんとかしてくれ