演劇 パルコ劇場にて


主演 小林 聡美



とうとう この日が来た


初めて 小林聡美さんの舞台を観る


ライトが点くと


ステージの中央に小林聡美さんが


ひとり すくっと 立っていた


その瞬間


やっぱり 目頭が 熱くなった


好きな俳優さんが眼の前に立っている


これから しばし


同じ 時間  同じ 空間を 共に 過ごす


なんたる 幸福




 この芝居の原作を読んだことはなく


自分の眼で観た役者の演技 


自分の耳で聴いた台詞のみからの


解釈なので 


もしかしたら 


思い違いも


あるかも しれないが


感じたことを


いくつか 書いてみようと 思う



ハーパーは 殆ど 無表情 冷静 淡々


この人は ヒトとの 間に 距離を 置いている


自分の感情を抑えている


夫や娘に対しても


遠慮している  というか


傍観している


そんな 癖がついてしまっている


ように みえる



何故なんだろう




芝居がすすむにつれて


だんだん 明らかになってくる





2年ぶりにハーパーは母親と会う



なかなか 立派で 


真面目そうで 常識的で 意思の強そうな母親


教師だった父親


勉強のできたハーパーは かなり期待されて


育てられたらしい


この この母親の雰囲気から判断しても


厳しい 道徳的な環境で


育ったのだろう



ハーパーは この両親の期待に


応えられなかった という 罪悪感がある


夫が不祥事を起した時にも


かなり 責められたらしい


責められた と 思い込んだだけかもしれないが


それ以来 両親とは疎遠になってしまっている


そのことにも 罪悪感を抱いている



しかし 母親との会話がすすむうちに


ハーパーのなかで


自分の 両親に抱いていたイメージが


ずれてきた ようにみえた



親を信頼して


親の影響を強く受けて


努力してきたコドモにとっては


たいへん ショックだ


自分のアイデンティティーが 揺るぎはじめるのだ


ハーパーは父親をとても愛していたから


余計に落胆したに違いない




台詞のなかにもあったとおもうが


ヒトは 固定観念を 持つと


自分が その通りにできないと


余計な 罪悪感に 


さいなまれることになる


固定観念とか 道徳観とか


なるべくだったら あんまり


所持していない方が 


楽な 人生を送れるのだ


しかし 育った環境やら 親やらから


しっかりと 植えつけられてしまうので


どうしようも ない




真面目に生きてきたハーパーにとっては


夫が起した不道徳な不祥事にも


これまで の人生を


全否定された気が したに違いない


それを警察に通報したのが


仲良くしていた友人だったらしい


人間不信ぽく なってしまうのも


壁をつくってしまいがちになるのも


そのせいか と おもう



ハーパーは ずっと


苦しい 寂しい 


しかし 感情を 荒だてることはない


ひとりで じっと 押さえ込んでいた


のだと おもう







しかし そんな ハーパーにも限界が


とうとう訪れる


ハーパーの 復讐が始まる


自分のがんじがらめの人生への



まずは 昼間からバーへ行き


一杯飲む


そこで なんだかんだ うざく


話しかけてくるオトコがいる


そのオトコの革ジャンを借りて 着てみる


着てみたかったが 若いときに着る事がないまま


中年に なってしまったハーパーなのだ



この気持ち わかるな


ジンセイのやりのこし の解消



そのオトコになんだかんだ うるさく 


言い寄られたハーパーは


はっきり 拒絶する


「あんたは  クサイ」 とか言い返す

そのオトコはキレて 失礼なことをハーパーに言う


ハーパ-は


ワイングラスを そのオトコの頸に突き立てる


ハーパーは これまで ヒトに何か言われても


言い返したり やりかえしたことは ないのだ


ワイン・グラスを 突き立てるとは


かなり 過激だが

相変わらず ハーパーは


冷静に 淡々と 仕返しする


冷静に淡々は 長年の癖だから


しょうがない


次にハーパーは


出会い系サイトでオトコに会い


一夜を共にする


相変わらず 冷静に 淡々と



これしか ないんか と


若干 つっこみたく なったが


夫に対しても これが 一番かもね


確かに



革ジャンを着たまま 自宅に帰ったハーパー


無断といえども


たった2日間  留守にしただけなのに


娘がギャンギャン ハーパーを 怒る


心配しただの 


パパが おそろしく 慌てて


階段から 落ちて 捻挫しただの


革ジャン 似合わないだの


ギャー ギャー


いろいろ 言い立てるが


ハーパーが 勤め先を クビになったら


自分が進学できなくなる


それだけ で 怒りくるっているだけだ


自分の利だけを 主張する


親の気持ちなんて 考えてもいない


キャン キァン ギャー ギャアー


ハーパーは 何も言い返したりしない



この娘 終始 ウオークマンのイヤフォンを


耳につけたまま 会話しているが


ハーパーは ごく 冷静に 


「イヤフォンを はずしなさい 」と いう




娘に対しては そんな程度に済ますが




朝食のテーブル


ハーパーは 夫に


出会い系のオトコとのことを 話し始める


相変わらず 冷静 に 淡々と


だまって 聞いている 夫


娘が起きてきて パジャマのまま テーブルに着く


夫が やにわに 喋り始める



田舎に引っ越して


午後はわら小屋で ふたりで 昼寝だとか


週末は 娘が ボーイフレンドと 遊びに来るだの


娘に赤ちゃんができたことを 報告されて


大喜びするだの


朝は娘が自分のために


ベーコンを焼いてくれるだの


こっちも  負けず劣らず 淡々に


ほとんど 妄想だ


夢のまた夢だ


この夫 不祥事以来 失業しているし


この夫婦は 一見 何事もなく


毎日 暮らしているが 


妻は 夫のこと


完全に見限っている


娘もだ

 


家族との こんな 幸福な 未来


あるわけないのだ


それでも オットは 臆面もなく 理想を語る


なんたる 依存心


甘ったれ




娘 びっくりして 目ぱちくり


まだ 眠っているんじゃないかと 


両手で目をこする



信じられないだろうけど 


現実だよ とワタシ


おとうさん 急に 頭 変になっちゃったわけじゃないよ



オット ツマ オヤ コドモ


カゾク カテイ ショクバ ユウジン


ジンセイ


こんなもんかね


そう こんなもん




オトーサンだけが 


いつまでも あきらめない


ジブンの現実をみとめようとしない


いつまでも 幻想を 抱いている


こっけいだ


惨めだ


幼稚だ