1月1日・サリンジャーの毒 | papirow(ぱぴろう)のブログ

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謹賀新年。
1月1日は、ジョン万次郎が生まれた日(文政10年)だが、米国の作家、J・D・サリンジャーの誕生日でもある。小説『ライ麦畑でつかまえて』の作者である。

ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーは、1919年、米国のニューヨークで生まれた。父親はチーズを商うポーランド系ユダヤ人で、母親はスコットランド、ドイツ、アイルランドの血をひいていた。ジェロームは2人きょうだいで、上に姉がひとりいた。
大学時代から小説を書いていたサリンジャーは、第二次世界大戦がはじまると、志願して軍に入隊、25歳のときには、ノルマンディー上陸作戦に参加した。
戦後、神経衰弱になって除隊したサリンジャーは、しばらくニューヨークで暮らしていたが、30歳のころから、コネチカット州のウェストポートに家を借りてこもり、『ライ麦畑でつかまえて』を書きはじめた。
31歳のときに『ライ麦』が完成。これは、大戦後間もない米国の高校生、ホールデン・コールフィールドが、学校を退学させられ、寮を飛び出し、ニューヨークを放浪する数日間を描いた作品で、以前に雑誌に発表していた短篇「気ちがいのぼく(I'm Crazy)」をベースにしたものだった。
この小説は、彼が31歳のときに刊行されると、たちまち世界的ベストセラーとなった。
有名人となったサリンジャーは静かに生活できなくなり、ニューハンプシャー州へ引っ越して、周囲に高い塀をめぐらせた家に引きこもって暮らすようになった。
『ナイン・ストーリーズ』『フラニーとゾーイー』などを発表した後、46歳以降は、作品を発表しないまま、2010年1月27日、ニューハンプシャー州コーニッシュの自宅で、老衰により没した。91歳だった。

『ライ麦』は、1951年に発売された大ベストセラー小説だが、以後も全世界で売れつづけ、いまだに毎年数十万部単位で売れているらしい。怪物的ロングセラーである。
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』は、拙著『名作英語の名文句』でも取り上げた。

『ライ麦』は、最初、出版する予定だった出版社から、主人公の言動が常軌を逸しているという理由で、出版をことわられ、べつの版元から出た経緯があったそうだ。
ジョン・レノンを射殺したマーク・チャップマン、レーガン元大統領を狙撃したジョン・ヒンクリーなども、『ライ麦』の愛読者だったらしい。

文学作品というのは、読者にとって、しばしば危険な「毒」だけれど、サリンジャーの『ライ麦』もの、そのひとつかもしれない。ドストエフスキーとか、ランボーとか、セリーヌとか、若いころの村上龍なども、そういう作品を書く作家だった。最近では、毒にも薬にもならない文学作品が氾濫しているように感じるのは気のせいだろうか?
ふぐ料理の通にとっては、ピリッとこないと物足りない。
同様に、人生には「毒」が必要で、それに当たって死ぬのもまた人生だろう。自分もそのひとりだけれど、毒がないと生きていけない種族というのは、いる。
(2016年1月1日)


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