1月5日・安房直子の詩情 | papirow(ぱぴろう)のブログ

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1月5日は、ゴロで「囲碁の日」。この日は文豪、夏目漱石(慶応3年)が生まれた日だが、児童文学作家の安房直子(あわなおこ)の誕生日でもある。

安房直子は、1943年、東京で生まれた。本名は、峰岸直子。
日本女子大の国文科に進んだ彼女は、学生時代から大学の児童文学誌に毎号作品を発表していた。
卒業後は、同窓生の仲間と同人誌「海賊」を創刊し、同誌に児童文学を発表した。
26歳になる年に同誌に『さんしょっ子』を発表。この作品で、日本児童文学者協会新人賞を受賞し、作家としてデビュー。
以後『きつねの窓』『北風のわすれたハンカチ』『風と木の歌』『はるかぜのたいこ』『遠い野ばらの村』『山の童話・風のローラースケート』『うさぎ屋のひみつ』『花豆の煮えるまで-小夜の物語-』などを書き、さまざまな児童文学賞を受賞した後、1993年2月、 肺炎のため、没した。50歳だった。

若いころ、自分は女性の友人が「とてもいいから」というので、それではためしに、と、安房直子の本を買ってみた。読んでみると、恋の物語や、家族の愛情が底流する物語のなかに、切なさや、悲しみが透き通ったようにしみていて、大好きになった。いまでも本棚に並んでいる。

鉄砲をもった猟師が、きつねにだまされたふりをして、きつねのやっている染物屋のお客になり、指を染めてもらうという美しい話『きつねの窓』。

ひとりの少女が診療所の医者を訪ねてきて、耳のなかに「ひみつ」が入ってしまったから、急いで取りだしてくれと訴えるという印象的な場面からはじまる物語『鳥』。

翻訳家が夜中に外国の物語を翻訳していると、いつしかその物語のなかに自分がまぎれこんで、妖精と恋に落ちてしまうという妖しい物語『南の島の魔法の話』。

彼女の作品は、いずれもそれぞれに味わい深い詩情豊かな短編で、駄作というものがない。なかでも、小学校の教科書にも採用された『きつねの窓』など、絶品だと思う。
もちろん、作者が砂をかむような苦労があって後に産まれた作品なのだろうけれど、その苦労の跡を見せない、さらりとした出来ばえで、まったく頭が下がる。
安房直子はこう書いている。
「私が、ファンタジーの作品を好んで書くのは、空想と現実の境の、あの微妙に移り変わる虹の様な色が、たまらなく好きだからです」(「児童文芸 '76夏期臨時号」)
この発言など、泉鏡花のつぎの発言に通じると思う。
「夕暮れとか、朝とか云ふ両極に近い感じの外に、たしかに、一種微妙な中間の世界があるとは、私の信仰です。私はこのたそがれ趣味、東雲趣味を、世の中の人に伝へたいものだと思つて居ります」(「たそがれの味」『鏡花全集 第十五』春陽堂)
安房直子。未読の方には、ぜひおすすめです。
(2015年1月5日)


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