さいとうたかをは、1936年、和歌山県で生まれた。本名は斎藤隆夫で、彼は5人きょうだいの末っ子だった。一家は隆夫が小さいときに大阪の堺へ引っ越し、彼は堺で育った。家は理髪店をやっていたが、父親が家出し、母親が理髪店を切り盛りして女手ひとつで5人の子どもを育てた。
小さいころから絵が上手だった隆夫は、勉強、とくに数学をまったく学習せず、中学卒業後の14歳のころから家の理髪店で働いた。
米国のマンガや、手塚治虫のマンガを読んで感化され、マンガを描きだした。18歳のころ、ストーリーマンガを描いて出版社に持ち込み、採用され、貸本屋向けのマンガ作家としてデビューした。
その後、マンガ雑誌に描くようになり、23歳のころから、マンガの製作を分業化して、組織で作品を作り上げていく体制「劇画工房」を結成し、これが解散した後、24歳の年に「さいとう・プロダクション」を設立。完全分業制の雇用条件もしっかりした製作体制を固めた。
従来のマンガからギャグやコミカルな要素を省き、リアルで迫力のある画面構成の新しいマンガを「劇画」と名付け、イアン・フレミングの「007シリーズ」の劇画版、時代ものの「無用ノ介」シリーズ、池波正太郎の「鬼平犯科帳」シリーズの劇画版などを量産し、32歳のとき、マンガ誌に連載を開始した「ゴルゴ13」シリーズで圧倒的な人気を博し、組織的な製作システムにより安定したクオリティーの作品を発表しつづけている。
自分の家の最寄りJR駅である高円寺駅前には、リイド社という「ゴルゴ13」シリーズのコミックスを出している出版社の立派なビルが建っていて、ずっと昔、自分は友人のマンガ編集者の打ち合わせについていって、応接室に入ったことがある。そのとき、となりの席で打ち合わせていたのが、そこの社長で、さいとうたかをのお兄さんだった。
友人のマンガ編集者にそのビルが建つにいたった経緯を聞いた。聞いたよると、はじめ大手出版社の雑誌に「ゴルゴ13」が掲載された際、さいとうプロ側が、この作品を単行本化する際には、自分たちで出したい旨の了解を求めたそうで、大手出版社の担当者は、どうせ人気が出ないだろうとOKを出し、契約書も作って判子を押した。掲載された作品は大反響で雑誌連載が決まり、「ゴルゴ13」のコミックス(単行本)はさいとうの兄が立ち上げたリイド社から発売された。シリーズは大ヒットし、すぐにビルが建った、と、そういう話だった。それで大手側は雑誌の形で「ゴルゴ13」は出せるが、単行本としては出せず、何十億円(もっとかも)ものビジネスチャンスを失ったのだった。契約書を作った大手側の社員は左遷されたかクビになったかしたと聞いた。
さいとうたかをは算数の九九も知らないそうだ。そういう人が、あの国際的な経済情勢や軍事情勢、最先端科学などがつねにからんでくる国際テロリスト「ゴルゴ13」の話を作っているというのはおもしろいと思う。組織を統率するオーガナイザー的な才能をもった創作者で、現代のアレクサンドル・デュマである。強烈な魅力をもった創作者だと思う。
(2014年11月3日)
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