「太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。」
三好達治は、1900年、大阪で生まれた。父親は印刷業を営んでいて、達治は長男だった。
小さいころはからだが弱く、神経衰弱だった達治は、中学のころから俳句に熱中していた。
家業の印刷屋が傾いたため、学校をやめ、陸軍の幼年学校、士官学校と軍隊の学校に通ったが、20歳のとき、士官学校を脱走し、退学処分となった。
22歳のとき、京都の第三高等学校に入り、その後、東京帝国大学の仏文科に進み、ボードレールの詩集『巴里の憂鬱』を訳し、自分でも詩を書いた。
30歳の年に、処女詩集『測量船』を出版。抒情的な詩で人気を博した。
翻訳、詩、評論を書き、学校の校歌の作詞などをした後、1964年4月、心臓発作のため、東京で没した。63歳だった。
たしか河盛好蔵が書いていたと思うけれど、三好達治という人は、和文和訳をよくやったらしい。つまり、フランス語の詩を自分で訳す仏文和訳でなく、すでに日本人の誰かが日本語に訳してあるのをべつの日本文に書き換えて、あたかも自分で訳したように発表するのである。
三好達治に限らず、現代でもこういうことをする例はけっこうあって、有名な作家が翻訳者に名があったりするのはたいてい、別の日本人が「下訳」という名目で先に訳してあって、それを有名作家が和文和訳したものである。なかには、大学の英語教授が和文和訳している例さえあるのを、自分は知っている。
自分は三好達治の詩集『測量船』を初版の復刻版でもっていて、ときどき開く。
「春の岬」「雪」「峠」「夜」「草の上」など好きで、音読したりする。
現代的でありつつ夢幻的で、放浪の旅をする魂の詩といった感じがいいと思う。
「太郎を眠らせ~」の詩「雪」は、たしか井伏鱒二が独特の解釈をしていて、それによると、太郎と次郎の兄弟は一日じゅう、青い鳥をさがして野山を歩きまわり、結局みつからず、疲れて帰ってきて、いまふとんで寝ている。夜で雪が振っていて、はりの上に青い鳥がとまっていて、その寝顔を見下ろしている、というようなものだった。すごい、名解釈だと思った。
読んだ人の心に、いろいろに想像させるイメージ喚起力、三好達治の詩にはそれがあると思う。
(2014年8月23日)
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