5月2日・秋元康のキャプション | papirow(ぱぴろう)のブログ

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5月2日は、インドの作家、ジャヤカーンタンが生まれた日(1934年)だが、作詞家、秋元康(あきもとやすし)の誕生日でもある。ご存じ、AKB48の仕掛け人である。
自分の学生時代はおニャン子クラブの全盛期で、友人がフジテレビのスタジオに見学に行ったりして舞い上がっていた。それから数十年たったいまは、AKBの新譜が出るたびに年下の友人たちがせっせとCDを買っている。いずれも自分はピンとこず、好みがちがのだけれど、いつもそのブームの向こう側にいる、意識せざるをえない巨大な存在、それが秋元康だった。

秋元康は、1958年、東京で生まれた。父親は会社員で、康は2人兄弟の長男だった。
高校生時代、ラジオの深夜番組にパロディの脚本を送りつけたのをきっかけに、大学時代から放送作家のアルバイトをはじめ、しだいに作詞の仕事も受けるようになった。
テレビ番組「夕やけニャンニャン」の構成をし、27歳のころからアイドルグループ「おニャン子クラブ」の楽曲の歌詞を書き、プロデュースも担当し、名を馳せた。
47歳のとき、東京の秋葉原で、街の劇場で毎日会えるアイドルをコンセプトにしたアイドルグループ「AKB48」を立ち上げ、AKBの楽曲の歌詞を書いた。AKBは苦境の時期をへて、絶大な人気を誇るグループに成長。秋元は同種のアイドルグループの全国展開、世界展開を進めつつ、映画の企画、監督、大学教授職など多才な分野で活躍している。

秋元康が書いた歌詞の歌には自分が好きな歌がたくさんある。稲垣潤一の「ドラマティック・レイン」「1ダースの言い訳」、小泉今日子の「なんてったってアイドル」、国生さゆりの「バレンタイン・キッス」、それからAKB48の「ヘビーローテーション」「恋するフォーチュンクッキー」などなど。女のコのアイドルが男の立場に立って歌うというAKB48のスタンスは、はじめて聴いたときはとても新鮮だった。聴いた人の人生を変えるとか、聴いた人の心に突き刺さるとかいうのとはちがうのだけれど、秋元康の詞には、おや、と思わせるものがある。時代の空気を軽やかにとらえたキャッチーなひねりがきいていると思う。

おそらく秋元康のいちばんすごいところは、これだけテレビ局やレコード会社、広告会社が利権を争って産業化された業界に、個人として割って入って、周囲をうまく利用して、ちゃんと自分の居場所を確保したところだと思う。彼は、すっかり組織化されてしまった現代社会における反逆者、新しい英雄なのかもしれない。

ずっと以前、大手出版社の編集者がこんなことを言っていた。
「いやあ、このあいだ、週刊誌のグラビアを担当している社員と話していたら、若い娘の水着のグラビア写真に付けるキャプションで、ものすごく苦労しているって言うんですよ。あれはあれで、けっこう難しくて、若いモデルの水着写真の横にある文字は、あんまり意味があっちゃいけないんですよ。邪魔だから。そうかといって、あればいちおう読みますから、あんまりバカなことを書いてもまた写真の邪魔になってしまう。そういう、意味のない、邪魔にならない文句を並べるのに、日々四苦八苦しているって言っていました。自分のやっていることと同じだなあ、と」
秋元康がやってきたことが、グラビアページのキャプションと同じだとは言わないけれど、通じるところはあると思う。彼がグラビアに通じる或る的をねらい、つねに抜群の命中度を誇る実績をあげてきたことはまちがいない。能才とは、いるものだ。
(2014年5月2日)


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