11月11日・「怪盗ルパンの父」モーリス・ルブラン | papirow(ぱぴろう)のブログ

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11月11日は、『タイムクエイク』を書いたカート・ヴォネガットが生まれた日(1922年)だが、「怪盗ルパン」シリーズを書いたモーリス・ルブランの誕生日でもある。
怪盗アルセーヌ・ルパンこそ、少年時代の自分のアイドルだった。自分は小学校の図書館にあった南洋一郎訳のポプラ社版「怪盗ルパン全集」を全部読み、学校にないものは自分で買いそろえ、当時出ていたそのシリーズはすべて読んだ。ルパン・シリーズのよいところは、フランスらしく、作中に恋の香りがいつも漂っているところである。

モーリス・マリー・エミール・ルブランは、1864年、仏国ノルマンディー地方の古都、ルーアンで生まれた。
ルーアンの学校をへて、ドイツやイタリアに遊学したモーリスは、フランスのパリ出て法律の勉強をした。しかし、これを途中でやめ、警察詰めの事件記者となって雑誌に記事を書いたり、犯罪小説などを書いたりするようになった。
ルブランはもともと純文学志望だったらしいが、30代のころまでは、ぱっとしない、売れない作家、ジャーナリストだった。
ルブランが40歳のころ、英国ではコナン・ドイルが書いた名探偵シャーロック・ホームズ・シリーズが人気を博していたが、ある編集者が、これをヒントに、似たような探偵小説を雑誌に書くよう、ルブランにすすめた。
ルブランは、知人をモデルにして、探偵でなく泥棒の主人公を作り上げ、短編『ルパンの逮捕』を書き上げ、雑誌に発表した。フローベールやモーパッサンのようなものを書きたいと希望し、こういうものに興味がなかったルブランは、ルパンものは一回こっきりのつもりで、話の結末をつけた。
すると、この短編が大好評で、雑誌の編集部から「ぜひこの続編を」と催促されるようになった。ルブランはこう言ってことわったという。
「物語の最後でルパンは投獄されることになった。だから、もう続きはないんだよ」
すると、編集者はこう返したという。
「そんなことは簡単だ。脱獄させればいいんだよ」(モーリス・ルブラン著、竹若理衣訳「アルセーヌ・ルパンとは誰か?」『ルパン、最後の恋』早川書房)
それで仕方なくルブランは、続きを書き、その後約30年にわたってルパンものを書きつづけた。ベストセラーとなった小説中のルパンは単なる泥棒から華麗な怪盗紳士へと成長し、弱者を救い、悪者をこらしめ、フランス国家の危機を救う大活躍をして、フランス国内はもちろん、世界中にファンをもつ小説中のヒーローとなった。
ルブランはこの国民的英雄の創造に対して、ルブランはレジオンドヌール勲章を授与された後、1941年11月、ペルピニャンで没した。77歳になる5日前だった。

怪盗ルパン・シリーズは、推理ものであると同時に、恋愛冒険小説で、その意味で、だいぶ味わいは異なるけれど、ミッキー・スピレインのマイク・ハマー・シリーズに一脈通じていると思う。
恋する怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの結婚は悲劇に終わることが多い。小説のなかで彼は何度か結婚しているけれど、彼の奥さんになった女性は、出産のときに亡くなったり、結婚してすぐ修道院に入ってしまったり、ピストルで撃たれて死んだりしていて、ルパンは幸福な結婚生活をなかなか送ることができない。そういう、悲劇的な側面が、泥棒稼業の裏打ちみたいなものになっていて、それがルパン・シリーズを強くしているのかもしれない。
ルパンはたしか晩年は、バラを栽培して余生を送ることになっていたと思う。シャーロック・ホームズは晩年は養蜂である。その辺のちがいも英仏で趣を異にしていて興味深い。
(2013年11月11日)




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