10月30日・「フランス映画」クロード・ルルーシュ | papirow(ぱぴろう)のブログ

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10月30日は、天才サッカー選手、ディエゴ・マラドーナが生まれた日(1960年)だが、フランス映画のクロード・ルルーシュ監督の誕生日でもある。
ルルーシュ監督は、自分がもっとも敬愛する映画監督のひとりで、彼の作品は、
「観ておいてほんとうによかった」
と思わなかったことがない。日本で「フランス映画みたいな」とか「映画みたいな恋」とか言うとき、要するにそれは「ルルーシュ監督の映画のような」という意味だと思う。

クロード・バリュック・ジョゼフ・ルルーシュは、1937年、フランスのパリで生まれた。
父親は、アルジェリアからやってきたユダヤ系移民だった。
クロードは、バカロレア(大学入学資格試験)に失敗したとき、失意をなぐさめようとした父親に、はじめて撮影用カメラを買い与えられた。クロードはこれでルポタージュ作品を撮った。そして23歳のころ、初の長編監督作品「人間の本質」を発表した。しかし、作品は酷評され、興行的にも失敗した。ルルーシュはほぼ破産状態へ追い込まれた。
打開策に詰まった彼はひとりでクルマに乗り、考えにふけりながらひたすら運転し、英仏海峡に面したドービルの海岸に午前2時に着いた。疲れ切った彼はそのままクルマのなかで眠った。目を覚ますと、海岸を散歩している人影に気づいた。女と子どもと犬が、引き潮の波打ち際を、午前六時の早朝に散歩しているのだった。
「どういう事情をもった人なのだろう」
ルルーシュは自分の悩みを忘れて、彼女らの背負った事情、生活を想像した。すると、夫を失い、わが子を寄宿学校に預けている母親、というイメージが浮かんできた。さらに、彼女と同じような境遇の、子連れの男が、子どもの寄宿舎で彼女と出会い、恋に落ちるというストーリーが頭のなかにできあがった。
彼は1カ月半で脚本を書き、1カ月で俳優やスタッフ、資金を集め、配給会社も決まらないまま、3週間で撮影、3週間で編集を仕上げ、長編映画「男と女」を作り上げた。
29歳の年に発表されたこの作品は、カンヌ映画祭でグランプリをとり、アカデミー賞の外国語映画賞に輝き、世界中で大ヒットした。
破産寸前だった無名のルルーシュは、一躍引っ張りだこの人気監督となり、新鮮なみずみずしさに満ちた映像表現で、恋の映画をつぎつぎと作り、世界的巨匠となった。
作品に「白い恋人たち」「パリのめぐり逢い」「あの愛をふたたび」「続・男と女」「夢追い」「愛と哀しみのボレロ」「レ・ミゼラブル」などがある。
自分としては「男と女」「夢追い」をとくにおすすめしたい。

ルルーシュは、撮影の前に音楽の録音をすませておく珍しい監督で、その音楽を出演者に聴かせて、そのシーンのイメージをもってもらうのだという。そして、セリフは決めず、俳優たちにはそのシーンの意味だけを伝え、彼らが好きにしゃべるのにまかせ、恋人たちが語らうシーンとして、望遠レンズで遠くから撮る。撮影直前のリハーサルはおこなわず、同じシーンを2度撮ることもしない。それで、ああいう、新鮮な感動に満ちた、一期一会的な、生き生きとした恋の映画ができあがるのである。

ルルーシュは、映画撮影についてこういう意味のことを言っている。
「映画は、物語と同じ時間で撮影されるべきだ。たとえば、3週間の物語は、3週間で撮る、というように」
この考えは、とても味わい深いものがあると自分は思う。
(2013年10月30日)



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