4/19・フェヒナーの精神物理学 | papirow(ぱぴろう)のブログ

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Something to remember today. 今日の日が流れて消え去ってしまう前に。

4月19日は、1775年のこの日、当時植民地だった米マサチューセッツ州コンコードで、英国軍兵士と、地元農民とのあいだで銃撃戦がおこなわれ、アメリカ独立戦争の火ぶたが切って落とされた日である。
そして、4月19日は、精神物理学の開祖、フェヒナーの誕生日でもある。

かつてニューヨークに住んでいる従姉から、電子メールで、最近ネット上で知った情報だとして、こんなニュースを報せてきたことがあった。
「肉体的な痛みについて、世界的な基準が確立された。鼻の粘膜の感覚は、人体のなかでいちばん個人差が小さいらしい。これを発見した日本の某大学の医学教授が、1センチメートルの鼻毛を1ニュートンの力で引っぱるときに感じる痛みを、『1ハナゲ』として定義する、という学説を発表し、これがスイスで開かれた国際学会で世界共通の学術的単位として承認された」
実際のメールでは、大学名も、学科名も、教授の名字も、学会が開かれた都市の名前も明記されていた。柱の角に足の小指をぶつけた痛みが何ハナゲ、出産時の妊婦の苦痛が何ハナゲ、などと数値の例も示されていた。
自分はおもしろいと思い、裏をとってみた。そうして、これはネット上に流れているほら話のひとつなのだとわかった。その大学にそういう教授はいず、そんな国際学会は開かれていないのだった。
でも、人間の痛みを、そうやって数値化できたらおもしろいし、なにかと便利だと思う。
「あなたの悩みは何ハナゲでしょう? まだいいわよ。わたしなんか何ハナゲなんだから」
なんて。でも、世の中には、外からの刺激と、内の感覚との対応関係を測定して、定量的に計測しようとする学問分野が実際にある。それが精神物理学(心理物理学)で、この学問をはじめたのが、独国のフェヒナーという学者である。

グスタフ・テオドール・フェヒナーは、1801年4月19日、独国のラウジッツ地方で生まれた。父親は牧師だった。
はじめドレスデンのアカデミーで、17歳からはライプツィヒ大学で、グスタフは医学を勉強した。
33歳のとき、同大学の物理学教授となったが、色覚と視覚の実験のため、太陽を観るなど目を酷使し、目を悪くしたため、38歳のときに教授職を辞した。
視力が回復した後、彼の研究テーマは、精神と肉体の関係の研究へ移っていった。
1887年11月、ライプツィヒで没。86歳だった。

フェヒナーが定式化した「フェヒナーの法則」というのがある。これは、
「基本的な刺激と感覚の関係は、心理的な感覚量は、物理的な刺激の量の対数に比例する」
というものである。この法則から、こういうことが言えるらしい。
「外からの物理的な刺激がひじょうに小さいときは、心理的な感覚がゼロになり、心は何も感じない。逆に、外からの物理的な刺激が一定以上に大きくなると、心はそれ以上大きくは感じなくなる」
007シリーズの小説のなかで、ジェイムズ・ボンドが敵の拷問を受けるシーンがあって、そのときボンドはこう考える。
「苦痛というものは、放物線を描くものだ。急に上昇して最高潮に達し、それからは神経もにぶって、だんだん反響は弱まり」(イアン・フレミング著、井上一夫訳『カジノ・ロワイヤル』創元社)
あれなど、この「フェヒナーの法則」に通じるかもしれない。

心理学の分野では、心理社会的ストレッサーの強さが数値化されている。それはたとえば、
・「配偶者の死」のストレスを「100」とすると、
・「離婚」73
・「退職」45
・「解雇」47
・「経済状態の変化」38
・「上司とのトラブル」23
といった具合。自分はよく知らないが、こうした数値化も、フェヒナーの研究の影響を受けている気がする。

精神と肉体の関係について研究したフェヒナーは、こう言っているそうだ。
「死は生命のひとつの過程であり、死は形を変えた誕生、すなわち、物質界への誕生ではなく、霊界への誕生である」
フェヒナーの研究テーマは、自分にはとても魅力的だ。フェヒナー先生の本を読んで、もっと勉強してみたいと思う。
(2013年4月19日)



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