3月9日は、「地球は青かった」と言った宇宙飛行士、ユーリイ・ガガーリン(1934年)が生まれた日だが、米国のベストセラー作家、ミッキー・スピレインの誕生日でもある。
自分がはじめてスピレインの小説を読んだのは、中学生のころだった。私立探偵マイク・ハマーが活躍するシリーズ第一作『裁くのは俺だ』である。大ベストセラー小説で、ものすごく新鮮だった。映画「ダイ・ハード」をはじめとするハリウッド映画の源流、といった感じがする。
ミッキー・スピレインは、1918年、米国ニューヨーク市で生まれ、すぐとなりのニュージャージー州で育った。
第二次大戦がはじまった1941年12月8日(米国では真珠湾攻撃の翌日にあたる)、23歳のスピレインは陸軍航空隊に入隊。戦闘機のパイロットとなり、後、ミシシッピー州に配属され、飛行操縦の訓練教官になった。
終戦の年である1945年、結婚したスピレインは、ニューヨーク州のニューバーグに家を購入するために、小説を書いて売ることを決意。たった19日間で、私立探偵マイク・ハマーが登場する最初の長編『裁くのは俺だ』で書き上げ、出版社に送った。原稿は採用され、このハードボイルド探偵小説は1947年にハードカバー、翌1948年にはペーパーバックが発売された。
大胆な暴力シーンと性描写、サディズムが強調された、まったく新しい推理小説の登場だった。それまでのハードボイルド探偵は非情で、事件についても、恋愛に対しても、つねに冷めていたが、スピレインの描くマイク・ハマーはちがった。燃える熱い心をもち、犯人に強い憎しみを抱き、かっとなると見境なく暴力をふるい、情熱的に進んで恋愛に飛び込んでいく。
そんなハマーが、推理して事件を解決するだけでなく、自分の手で犯人を処刑してしまうという筋立てに、有識者、批評家たちは悲鳴を上げた。いっせいに拒絶反応を示し、ごうごうたる非難を浴びせた。ところが、一般読者には大歓迎され、米国内だけで650万部が売れるという大ベストセラーになった。
成功に気をよくしたスピレインは、「マイク・ハマー」シリーズを次々と発表。
『俺の拳銃はすばやい』『大いなる殺人』『寂しい夜の出来事』『復讐は俺の手に』など、いずれもベストセラーとなった。
エホバの証人の信者だったスピレインは、生涯に3度結婚している。2度目の結婚時代には、妻のヌード写真を小説本のカバーに使い、世間に衝撃を与えた。そのほかにも映画やテレビに出演し、話題をまいた後、2006年7月、サウス・カロライナ州の自宅で、すい臓ガンのため没した。88歳だった。
自分は「マイク・ハマー」シリーズのはじめから7話くらいまでは全部読んだと思う。あと、スピレインの短編も何冊か読んだ。
スピレインの作品は、売れに売れたので、作家や批評家たちから嫉妬され、それで悪い評価ばかりされたのではないか。自分はそう考えている。ミステリー批評家からひどい非難を浴びたことについて、スピレインはこういっているそうだ。
「大物作家たちは、キャビアより、塩のかかったピーナッツのほうが多く消費されているという事実をよく考えてこなかったのさ。もしも一般大衆が好きだというのなら、それはよいものなんだ」
(2013年3月9日)
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