2月6日は、ゴロから「ブログの日」。また、国連が定めた世界女性器切除根絶の日だが、フランスの映画監督、フランソワ・トリュフォーの誕生日でもある。
自分はトリュフォーの映画が好きで、全作品の半分近くはみている。
まだみていないものも、今後、折を見つけてはみていきたいと思っている。
トリュフォーは、ゴダールと並んで、ヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)の中心的監督だけれど、トリュフォーの映画は、ゴダールの作品とちがって、どの映画も一般大衆がおもしろくみられるようにできている。
そして、どの作品にも、ある新しい新鮮なときめきが、用意されている。
トリュフォーの出世作「大人は判ってくれない」、「突然炎のごとく」、「恋のエチュード」、「アメリカの夜」など、どの作品のなかにも、新鮮なときめきがあって、それは時代をへて見直してもなお、初々しさを失わない。トリュフォーという監督は、そんな独特の味わいをもった映画作家だと思う。
フランソワ・ロラン・トリュフォーは、1932年に仏国パリで生まれた。
フランソワは、未婚だった母親が産み落とした私生児で、母親が後に結婚した相手の男、ロラン・トリュフォーが認知し、それで彼の姓は「トリュフォー」となった。
実の父親は知られていないが、1960年代に探偵社によっておこなわれた調査によると、ユダヤ人の歯科医であると推定されている。
認知はされたものの、すぐに父母と暮らすことはかなわず、フランソワは幼いころ、祖母に引き取られ、育てられた。
感化院に送りこまれたりした不穏な少年時代をすごしたトリュフォーは、やがて映画にのめりこむようになり、雑誌に先鋭な映画批評を書きはじめる。
24歳のとき、ロベルト・ロッセリーニの助監督となったトリュフォーは、映画製作会社を興し、自分で映画を作りだす。
27歳のとき、最初の長編映画「大人は判ってくれない」を発表。これは、感化院にいた経験を生かしたトリュフォーの自伝的映画だったが、大ヒットとなり、ヌーヴェル・ヴァーグの旗手、トリュフォーの名は一躍有名になった。以後(以下、各年号はフランスでの公開年)、
「ピアニストを撃て」(1960年)
「突然炎のごとく」(1962年)
「柔らかい肌」(1964年)
「華氏451」(1966年)
「黒衣の花嫁」(1967年)
「夜霧の恋人たち」(1968年)
「暗くなるまでこの恋を」(1969年)
「恋のエチュード」(1971年)
「アメリカの夜」(1973年)
「アデルの恋の物語」(1975年)
「トリュフォーの思春期」(1976年)
「恋愛日記」(1977年)
「終電車」(1980年)
「日曜日が待ち遠しい」(1982年)
などなど、名作を数多く発表した後、1984年10月、ガンにより没。52歳だった。
トリュフォーの映画は、いつも恋愛映画で、さすがフランス人らしい、と感心する。というか、映画をみるならフランス映画、フランス映画なら恋愛映画、とこうこなくっちゃという王道を、トリュフォーはまっすぐ歩いた監督である。
そして、もうひとつの特徴として、トリュフォーの映画には、いつもセックスのムードが流れている。
トリュフォーは、作品のなかで露骨なセックス描写をするわけではないけれど、映像や会話のなかで、つねに性的なことがほのめかされていて、それが映画全体をとてもセクシャルな雰囲気にしている。エロ映画でないのに、とてもエロティックである。
こういうことを感じるのは、自分だけかしらと思っていたら、大女優のカトリーヌ・ドヌーヴがまさにそのことを指摘していると、最近になって知った。ドヌーヴはこういっている。
「フランソワは恋愛映画を何本も撮りましたが、作品の中には常に性的なものが存在していました。それはかなりぼかされていて、多くの場合は羞恥心のほうが優位に立っています。でも彼の作品を、たとえば『暗くなるまでこの恋を』を、ちょっと注意してそうした正確な角度から見れば、どんなに性的に激しくてはっきりしているかがわかります」(アントワーヌ・ド・ベック他、稲松三千野訳『フランソワ・トリュフォー』原書房)
「暗くなるまでこの恋を」は、自分がもっとも好きなトリュフォー作品で、DVDをもっていて、もう何度みたかしれない。
ドヌーヴはこの「暗くなるまでこの恋を」に主演していて、この映画の撮影中に、監督のトリュフォーと恋に落ち、二人は熱々の仲となった。トリュフォーが36歳、ドヌーヴが25歳のころである。
だから、この映画には主演女優のドヌーヴに対する監督の愛が、映画全編にわたってしみこみ、あふれだしているような気がする。
やりにくかったであろう主演男優は、ジャン・ポール・ベルモンド。
「主演女優と監督の恋と主演ベルモンド」の組み合わせといえば、「アンナ・カリーナとゴダール、主演ベルモンド」の「気狂いピエロ」が思いだされる。
ジャン・ポール・ベルモンドという人は、こうやってみると、監督が見ている前で、その恋人とラヴシーンを演じる、というシビアな場数を、けっこう踏んでいるわけである。
そういうドキドキ感も加わって、トリュフォー作品はますます、セクシャルな恋のムード満載なのである。
(2013年2月6日)
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