↑前回書かせて頂いた「プーチンさんがKGBで出世できなかった理由」についての続きです…
(お付き合い頂いてありがとうございます
すみません…プーチンさんについてあれこれ考えると楽しくて止まらなくなってしまって…
)
…すごく長いです(^o^;)
その理由を問う本は世に山ほどあり、「難問中の難問」、「ミステリー」、「お手上げで不可解な出来事」とされていて…
そして、その迷走の着地点は大抵…
プーチンさんが、
●欲のために如才なく抜け目なく立ち回れる人物だったから…
●天性の人たらしの才能の持ち主だから…
●出世のために予め用意周到に計画されたものだったから…
これらの理由を書かれた方々はどうもお忘れのようですが…

プーチンさんはKGBでは出世しておりません
ドーン
もし仮に皆様がおっしゃるように、
「プーチンは出世欲の塊で、手練手管で計画的に人々を騙し、操り、たらしこむような人だから大統領になれた」というのなら、KGBでもとっくにそれをやって出世しているはずなのです。
(プーチンさんは、KGBでも出世したと言い張ってますが、ささやかに二度昇進しただけで…しかも役職は上級補佐止まり…
)
ついでに言えば、皆様が言うようにプーチンさんが出世欲の塊であるならば、KGBなんかには行かずに、当時のソ連でナンバーワン出世街道である「共産党」を目指すハズです(年齢的に無理ということもありましたが、大丈夫だったとしても恐らく行かなかったはず)。
なので、プーチンさんが、異例の出世を果たした理由として、世に言われるような「出世のためにずるく賢く立ち回り、人に取り入ったため」という理由は、私は当てはまらないような気がするのです。
では、なぜプーチンさんが、大統領にまで登り詰める異例のスピードで出世する事が出来たのでしょうか?

その難問の答えは…
「KGBでは出世しなかった」理由と
同じ答えなのではないかと思いました

「出世した理由」と
「出世しなかった理由」が同じとは、一見すると矛盾した話に思えますが、ここに
決してブレないプーチンさんのプーチンさんたる所以が隠されているような気がするのです


では、その理由とは…?
そもそもKGBで出世する人というのはどういう人だったのでしょうか?
当時のソ連は慢性的な物不足に悩まされていたそうですが(μίαさんのブログでもその時のご苦労が書き連ねてありました

)、
KGB職員は、特権により国内外の大抵なものを手に入れることができ、それを売買して利益を得る輩が大勢いて…
そのためKGBという組織は、「金と賄賂にまみれた腐敗した組織」だったようです。
そして、そのような組織で出世するためには、「金」と「コネ」が非常に重要で、必要不可欠なものだったのだようで…
しかし、プーチンさんは真面目で、「賄賂」のやり取りなんか大嫌い。
(プーチンさんは、そういう「金」と「コネ」にまみれた人たちを「おしなべて役立たずで怠け者の出世主義者だった」と言って軽蔑していました。)
副市長時代でもプーチンさんは、「決して賄賂を受け取らない珍しい人物」として知られ、有名だったそうです。
なので、そんなプーチンさんがKGBという金にまみれた組織の中で出世できなかったのは当然の話で…
むしろ、KGBで出世できなかったということは=「高潔で誠実な人柄であった」という証なのだと思います。
(KGB時代の指導官ミハイル・フローロフもそう証言しています。)
そして、このプーチンさんの「賄賂を受け取らない誠実な人柄」は、KGBにおいては出世の妨げになりましたが、市役所や大統領府での職場では、その人柄ゆえに周りの人からの厚い信頼を得て、好感を持った有力者からの引きで出世して行きます。
そして、プーチンさんは、エリツィン大統領からも同じような理由で信頼され、首相に大抜擢されたりして、大統領府ではエリツィンさんの片腕として働くこととなるのです。
身も蓋もない理由ですが…プーチンさんが出世しなかった理由は、そもそもご自身が「出世」というものに全く興味がなかったから…ということらしいです。
プーチンさんが「KGBで出世しなかった理由」について、ドレスデン時代の同僚ウソリツェフさんは「プーチンは出世を目指して何かをやるようなことはなかった。それは彼のKGBでの経歴、任務が物語っている」と述べています。
ウソリツェフさんは、プーチンさんから「出世への意欲」を一度も聞いたことがなかったと証言しています。
「プーチンは、本当に男らしかった。
誰がどんなコネがあるとか、ポストがあるとか、出世についてウジウジ話をするなんてことはなかった。
プーチンはサムライだ。
そんな話をするほど落ちぶれていない。
彼はもっと高尚な話、法や宇宙や文学や哲学とかそんな話をしていた。」(「プーチンの実像」朝日新聞出版より)
またプーチンさんは、大統領候補にぜひなってほしいとオリガルヒキングのベレゾフスキーに頼まれた時も「そんな器ではない。」と、頑なに何回も断ったといいます。(では、なぜ急に引き受けようと思ったのか、プーチンさんの意志を変えさせる何かがあったと思われますが、それは何だったのか…すごく妄想が膨らみます。いつかまた書いてみたいです
)
プーチンさんは、出世欲がなかったためにKGBでは出世街道から外れることとなりましたが、市役所、大統領府時代では、そんな「無欲」なところが買われて逆に出世していくのです。
プーチンさんがKGBで
出世しなかった理由その③
プーチンさんのKGB時代、こんなエピソードがありました。

プーチンさんが、ある会合に参加した時のこと。
プーチンさんは、計画の手順を説明する先輩の情報部員の話を突然遮り、「その計画は間違っています。」と、発言しました。
先輩になぜかと聞かれると「法律に抵触するからです。」と答え、滔々とその法律について説明しはじめたそうです。
プーチンさんは、その場の先輩たちから驚き呆れられ「我々にとっては指令が法律だ。」とキッパリ突き放され、それ以上は取り合ってもらえなかったのだそうです。
「その言葉を素直に受けとることは私には出来なかった」と、プーチンさんは自伝の中で語っています。
プーチンさんは、国立レニングラード大学法学部を卒業しており、在学中は非常に勉強熱心で優秀な生徒だったそうです。
なので、自分が修めてきた学問には絶対的な自信と誇りとプライドがあったはず…。
しかし、KGBは自分が信じて学んできた法律を否定する組織で…
組織の指令を「法律」とし、それを遵守する、その「旧態依然」としたKGBの古い体質に、「法律」に精通していたプーチンさんは違和感と反発を覚えていたのではないでしょうか?
KGB側としても、「指令」よりも「法」を優先し、それをいちいち指摘してくるようなチェキスト(KGB職員)はあまり歓迎しなかったかもしれません。
しかし…
「法絡みの難しい案件はプーチンさんの所へ持っていけば全て見事に解決してくれる。」と評判で人々から信頼され頼りにされていたようです。
そして、上司やエリツィンさんの側近たちからも信頼され、どんどん出世していく理由の1つとなりました。
↑papiponフィルターによる若き日のプーチンさん
プーチンさんはご自分のことを「内向的で無口で面白味のない人間」と、分析しています。

KGB訓練所では、訓練終了時に出世にかかわる評価が下されるのですが…
プーチンさんは、そこでの評価は決して高くなかったといいます。
その評価表が低かった理由の1つが、ご自分でも分析しておられる「内向的で無口」という点でした。
KGBの指導官によると諜報活動において必要なことは、他人と接する能力と人を見抜く能力なのだそうです。
プーチンさんは、「無愛想で無口」だったためその能力が低いと判定されたようでした。
恐らく、他の人が当たり前にやっていた「コネミケーション」を使わなかったりしたことが災いして、そういう偏った判定が下されたのかもしれません。
プーチンさんは自分の「美学」に反する人たち(つまり、金とコネに執着する出世主義者たち)とは無理に付き合おうとはしなかったようで…、そういう人たちが蔓延するKGBでは「付き合い下手」の人間と思われていたのかもしれません。
要求されても
金も払わず、
コネも利用しなかったので
「付き合いの悪い、愛想のないやつめ
」と思われ、コミュニケーション能力が低いと勘違いされたのかも?
でも…
この
「無口で無愛想」というこの性格は
市役所~大統領府時代には突如として多くの人を惹き付け、
カッコいい!
とモテまくり、虜にする
「魅力(チャーム)」として輝き出します


KGB時代に欠点と見なされていたものが、むしろ、長所となったのはどういうことなのでしょうか…?

プーチンさんが市役所~大統領府時代に他の競争相手の中で明らかに誰よりもズバ抜けて上回っていたもの…
それは…
プーチンさん独特の"個性"にあると、言われています。
プーチンさんは、世代を超えて他人を惹き付ける不思議な「魅力」の持ち主…と言われ…
このプーチンさんの人間的な「魅力」については、なぜか数多ある「反プーチン本」でも認めざるを得ないようで必ず明記されています。
多くの人を惹き付け、虜にしてしまうその「魅力」とは何なのか…
高潔で真面目で誠実な人柄…というだけではない。
もう、
「LOVE♡
」に近い感情を相手に抱かせて、夢中にさせ
モテてしまう
(実際ロシアにはプーチンさんのためなら死んでもいいと言う人が数多いるとか…)「魅力」の秘密は、この
「無口で無愛想」という性格に紐付く…
「ツンデレ」、「ギャップ萌え」
今や2次元世界では当たり前となっている「ツンデレ」、「ギャップ萌え」ですが…
これらの概念が全くないこの時代にあって、プーチンさんは、既に自然にそれを体得し、達人の如く使いこなしていたと思われるのです。
普段「無口で無愛想」な人が…
↓つまり、こんな怖い顔ばかりしている人が…
一発でヤられてしまうのです

(「高倉健」さん的な?)
↓プーチン氏の必殺技「捨て猫アヒル口小首傾げ 」の好例。隣の小泉さんとの表情(悪例)の差が歴然

"捨て猫アヒル口小首傾げ"について書いた過去ブログ↓
まさに、
「ツンデレ」「ギャップ萌え」なのです


(BLの世界?)
そして、KGB訓練所の指導官は、プーチンさんを「内向的で無口」と酷評していたにも関わらず「その場を楽しませる気の効いた会話のできる人」という高評価もしていて、何だか矛盾した2つ評価に戸惑ってしまうのですが、実はここにも「ツンデレ」「ギャップ萌え」が発揮されていて…
つまり、
普段無口で無愛想な人が唐突にボソッ放つ面白い冗談はそのギャップから
核弾頭並みの爆発的な破壊力
を持つもので…
↓プーチンさんの言葉に何やら爆笑中のメドベージェフさん。プーチンさんはよくこうやって冗談を言って周りの人を笑わせています。

↑こちらは、プーチンさんお得意の「プーチン節」で米国をからかい、閣僚を爆笑させている動画
恐らくそれが教官の証言する「人を楽しませる気の効いた会話ができる人」という評価に繋がったのではないのかな…と、思うのです。
しかし、これらの
「魅力」は
「反プーチン本」によくあるような
「KGBによって身に付けた "人たらし" の技。決して信用してはならない
」というようなことではないようで…
東独ドレスデン時代の同僚ウソリツェフさんによると、
「彼は本物だ。演じていたのではない。彼はあるがままに振る舞っていたのだ」そうで…
その証言の通り、プーチンさんは、人たらしなどではなく、あるがままのプーチンさんそのものの魅力で人々を惹き付けていたようです。
そして、世に言われるような「人の良さを装って操ろう」とする、いわゆる「典型的なKGBタイプ」はプーチンさんの盟友と言われるセルゲイ・イワノフさんの方らしく…

↑セルゲイ・イワノフさん
確かに彼は、KGBでは世渡り上手で、プーチンさんよりも階級が上で、西側に配属されるなど抜きん出て出世しています。
「見ればすぐにわかる。セルゲイ・イワノフはいつも仮面をつけている。プーチンとは全然違う。プーチンはドレスデン時代から周囲の人々に大変好感を持たれ、特に年配者はまるで彼にとろけてしまうようだった。」
と、プーチンさんは世に言われているような人を欺くような人間では決してなかったとウソリツェフさんも述べています。
KGBという組織はイワノフさんのような人が出世をするところで、「これじゃプーチンさんは出世できないよな~

」とウソリツェフさんの言葉を読んで、あらためて思わされました。
ここまで、書いているとふと、プーチンさんが誰かに似ていることに気がつきました。
それは、私の大好きな戦国武将…
↓以前「黒田重隆」について書いた過去ブログ
黒田重隆は大河ドラマにもなった『黒田官兵衛』のおじいちゃんにあたる方です。
この方に、プーチンさんの性格も生き方も出世の行程もよく似てる…

計らずも、東独ドレスデン時代の同僚ウソリツェフさんが、「プーチンはサムライ」と述べたことが、ここでまさか一致してくるとは…