「お前の人脈には恐れ入ったよ」
「は?」
「あの試合の後、他チームのOB迄もがお前を擁護するコメントを出したからな」
「あれは…」
「元チームメイトで今はアルペン飛葉を率いる奥西のの根回しか?お前が可愛がっていた若い捕手をトレードで獲得したのもお前を狙っての事じゃないのか?」
「奥西は長野出身です。自分の動勢とは関係ありません」優はきっぱりと否定した。
「そろそろ本音で話そうか。お前は、このチームで何がしたい?」
「自分もチームも勝つ事に飢えてます。優勝経験のある榊󠄀監督の下で、もう一度狙ってみたくなったんです。それだけです」
「事情を知らん連中の中にはお前に反発する奴も居ると聞くが、1枚岩になる自信はあるのか?」
「やってみなければわかりません」
「泥水を被る覚悟はあると言う事か?」
「勿論です」
「なら、クローザーを降りて貰う」
「…」優の瞳に一瞬黒い翳りが見えた。
「夏場に調子を落とすクローザーが1枚じゃ優勝なんぞ狙えん。スペアを作る」
「成瀬ですか?」
「そうだ。奴は若いし荒削りで、感情の起伏を見せないお前とは対照的だが…奴を支えられるか?」
「自分の持ってる物全てを刷り込みます」
「優等生の模範解答だな」
「え?」
「ま、いい。期待してる」
榊󠄀は優の右肩をポンと叩くとドアの方へ歩いた。
そして、ドアノブに右手を掛けながら振り向いた。
「俺を胴上げする時は、そこに入った携帯忘れるな」と、優の腰辺りを指指しながら部屋を出た。