「可愛い〜!赤いレインコート何か着ちゃって…ユキさん見てます?最近はシルバーシートかと思ってたんスよね…最前列。それが今日はビンゴ!あれ?ユキさん?」

リリーフの松郷がモニターの前から離れない。

流石に彩の姿をバックネット裏最前列のボックスシートに見つけた時は目の遣り場に困った。

優は気不味くてブルペンの冷蔵庫から缶コーヒーを取り出し窓際に移動していた。缶コーヒーを開けて喉に流し込む。

『甘い…』

いつもならブラックの無糖缶を取るのに今日に限って微糖の赤い缶を手にしていた。

『彩が着ると言った赤いレインコートを意識したのか…我ながら情けない』

予報どおりに雨が8時過ぎから降り出した。強力なリリーフ陣が登板した6回辺りから試合は硬直状態が続く。このまま展開すれば優の登板は8時半…それまで彩は身動きせずにボックス席で試合を観ると言うのか…今日ばかりは雨雲が恨めしかった。