「優さん」

「何?」

優はグラハムクラッカーを頬張りながらタブレットを覗き込んでいる。昨日三振に打ち取れなかったラストバッター香山の打席を確認していた。

「今日ね、パパと野球観に行くの」

「へぇー、場所どこ?」

「百瀬スタジアム」

「百瀬?今日はダリヤ戦だから…当日券完売だと思ったけど取れたの?」

「パパが北川さんに頼んだら、テレビにも映るいいお席取れましたよって。パパも北川さんに頼んでよかったって」

「じゃ取れたんだね。8時頃から雨予報だから…展開にもよるけどコールドになるか、最後まで観るならカッパ用意した方がいいよ」

「パパの分は北川さんにさんが用意するみたい」

「彩は?」

「私はレインコート持って行く」

「あの赤いやつ?」

「そう!自転車にも乗れるタイプだからベンチで濡れても大丈夫よ」

彩は嬉しそうに自分が飲んだカフェオレボールと優が空にしたスヌーピーの器をキッチンへ片付ける。

『テレビに映るシート?まさか…最前列じゃないよな。あんなトコに座られたら気が散って投球なんてできやしない。いや、アドレナリン奮発で今季最速を記録するか?まずは、いつもの平常心だな、ヨシ!』