警告

この小説には18歳未満が閲覧するのに不適切な表現が含まれるので未成年の閲覧を禁じます。

あなたが18歳未満であるなら、ただちにYahoo!Japan など、他の未成年が閲覧しても差し支えのないサイトへ移動してください。























--------家族百景--------


 一希さんの家は電車で三っつ目、先日のパスタ屋さんとは反対方向。駅から歩いて十五分、線路沿いの白いマンション。
「ここはね、駅から見えるんで余計遠く感じちゃうんですよ。」
 やっぱり疲れているのか、歩く速さが今日はゆっくり、でもそれがうれしい。
 今日は腕を組むんじゃなく、手をつないで歩く、暖かい手、何かが流れ込んでくるような気がする。
「商店街の中の十五分と直線の十五分ではやっぱり感じ方が違いますよね、
でも買った時は、まぁ、今でもそうですが、他に高い建物はなくて、“あ~家が見える!”ってんで感動したもんです。」
 何気ない会話、一希さん、気を使ってくれている、やっぱりアタシ嬉しい。
「アタシ、うれしい・・・きっとお別れを言われると思ってたから。」
「そんなことないですよ、大石さんを好きになってしまいました。
 もう四十八なのに・・・迷惑だと言われるまでは一緒にいたいんです。
でも別れる時に面と向かってジジィというのは勘弁です。」そう言って、頭を掻く。
 またすぐ茶化すんだから・・・
「一希さんこそ、あんなに素敵な奥さんがいるのに、アタシでいいんですか?
“やっぱり冴美がいい”とか言いません?」
「いやいや、そんなことないです。」
 慌ててる、慌ててる。うれしい、何されてもうれしい、“箸が転んでもおかしい年頃”状態?
「でもあれですね、オレたちは傍から見るとどう見えてんでしょうかね?」
「仲のいい親子?ゼッタイ恋人同士には見てくれないわよね。」
「そりゃぁね!そういうふうに見られたら、オレ捕まっちゃうよ!」
 二人で声をあげて笑っちゃった

 一希さんのマンションは結構有名なマンション会社(?なんか変ないい方)オートロックでなんかすごい、十階建て、戸数はそんなに多くない、五十世帯くらい?
 エレベーターで八階に上がる、エレベーターのドアが開くと、猫が・・・
「さちこちゃん!お出迎えご苦労。ランちゃんは?」と声を掛ける、
 エレベータホールの陰からもう一匹の猫が顔を出す、一希さんは手を伸ばし猫の喉を撫でる。
 さちこちゃんと呼ばれた猫はキジトラ。ランちゃんというのは白っぽいアメリカンショートヘア?どこの猫?
「家で飼っている猫です、茶色いほうがさちこ、白いほうがランちゃんです。」
「マンションで飼ってもいいんですか?」
「まぁ、それを条件で買いましたから。」
 そういえば作業所にもラムという猫が住み着いてたっけ、猫好きだったわね・・・
 二匹の猫はアタシの足に絡み付いてくる
「この子達は女性が好きなんですよ、メスなんですけどね」

 エレベーターを降りて二つ目の部屋。
 廊下からちょっと奥まっている玄関、アルコーヴ付ってやつね、他よりもちょっとお高いはず、
 アタシが前に住んでたマンションでもアルコーヴ付の部屋は数十万円高かったって父様が言ってたから覚えてる。

「ただいま。」
「おじゃまします」
 開けっ放しの玄関、その中で聖羅さん?かわいらしい女の娘が迎えてくれた。
「お帰り、誰?その人、パパの彼女?」
 え~っ、何?いきなり。
「こら、お行儀が悪いぞ!」
 叱っているけど目が笑っている、父親の顔をしてる一希さんを見るのは初めて、アタシにもこんな素敵な父親がいたらなぁ・・・あんな鬼畜じゃなくてさ。
「え~だって、このお姉さんピンクなんだもん!」
 何の話?
「ゴメンネ、無作法で・・・とにかく上がってください。」

 部屋は3DK、あまり広くない、キッチンとその隣の部屋の間の仕切りが取り払われていて、2LDKにしてる。
 あ、コタツがある!いいなぁ~コタツ、あこがれるわ~。ウチには無いものね。
 コタツ(でも布団はもうなかった)の上にはご飯ができていた。
 キッチンでは冴美さんが忙しく動き回っている、聖羅さんもお手伝い、未来君は見当たらない。
「かじゅき、未来起こして」
 一希さんは“ん”と言うと、玄関脇の部屋に入っていった。

「ゴメンネ、こんなに早く呼んだりして・・・」
「いいえ、今日は父様もいませんし、自分ひとりじゃ食事しないことが多いので、嬉しいです。」
 聖羅さんがなんか期待に満ちた目でアタシを見てるなぁ、
 あ、目が合っちゃった。
「初めまして、聖羅です、東髙の一年生です。」
「こちらこそ、大石志津香です、聖ルカ高校三年です。」
 自己紹介をしていると一希さんが未来君と出てきた、ジャージ姿の未来君、結構ハンサム。
 なんか一希さんに似てるような気がするなぁ、血はつながってないんだよね?
「挨拶は?」そう言って未来君の頭を下げさせた。
「とーちゃん、この人はダメだ!」
「何を、突然!」
「解るんだ、この人はダメだ。」
 一希さんが狼狽している、未来君は何でそんなことを言うんだろう?
「未来、やめなさい」冴美さんが優しく叱る。
「さぁ、とにかく朝ご飯にしましょう、話はそれからよ!」
 話?やっぱりなんかあるから呼ばれたのね、とても不安。でも一希さんが手を握ってくれた。家族の前で、いいの?

 ん~絵に描いたような朝ご飯。
 納豆、おしんこ、卵焼きに、焼鮭、わか竹煮、味噌汁は大根とにんじん?それに白いご飯。
「納豆は大丈夫?」
「大丈夫です、この卵焼きおいしい。」
「パパの作る卵焼きのほうがもっとおいしいよ!」
「うるさいわね、だったら食べるな!」
「ご飯おかわり」
「未来、魚もちゃんと食えよ」
 なんかこんな絵に描いたような食卓初めて。うらやましくて、アタシいつのまにか泣いていた。
「志津香さん、どうしたの?」聖羅さんが気づいてくれた、
「ご飯に石でも入ってた?」
「ううん、こんなにぎやかな朝ご飯は初めてなんです。
いつも、一人でトースト齧るくらいだし、夕飯もそう・・・」
 一希さんが頭を撫でてくれた、ホッとする。
「これからはいつでも食べにおいで、待ってるから」
 アタシはただただうなづくだけ。
 ふと、未来君と目が合った、なんか赤くなってる。

 食事の最後のほうになって、なんかものすごいジュースが出てきた。
 色といい、匂いといい、ドロドロさ加減といい。思わず聞いちゃった。
「なんですか・・・これ?」
「これは、かじゅき用のジュース。
憑物落しをした時に飲ませてるの。でも久しぶりだからうまくできてるかどうか?」

 絶対できてないと思う・・・

「聖羅はそれ、ダメなのよねぇ、味はまあまあなんだけどね?」
 ホント?そうは思えない、と思っていたら、一希さんイッキ!解るわぁその気持ち。
 いやぁ、その口でキスはされたくないわぁ、
 ん?何で聖羅さんが赤くなるの?えっ、考えてることが解るの?なんなのこの一家!
「聖羅!」一希さんがたしなめる。

 朝食が終わり、みんなでお茶を・・・ややあって、冴美さんが話し始めた。

「あのね、今日来て貰ったのは、貴女に知っていて欲しいことがあったからなの。
・・・・
 ワタシもかじゅきもそういった”“力”があるってことは説明したし、見てももらったわよね。
で、ウチの子たちもそれに似た“力”があるの。
 聖羅と未来は憑物を落とすことはできないんだけど、
聖羅は心が読めるって云うか、他人が考えてることが見えるのよ。」
「そう、だからさっき志津香さんが入って来た時解ったの、パパを好きなんだって。
心を読めるって云うか、色が見えるのよ。
 オーラみたいなものなのかな?よくは解らないんだけど。
 玄関での志津香さんは綺麗なピンクと白が交互に光ってたから、好きな人といるんだって。
で、今は赤とグレーが斑になって見えたし、パパの口を見てたから、キスしたいんだって思ったの、ちょっと赤くなっちゃった。」

「未来は、なんていうかその人の属性みたいなものがわかるみたいなの」冴美さんが説明してくれる。
「俺は、何ていうかな、流れが見えるって云うのかな、“気”の流れかな?
うまく説明ができないんだけど、ねーちゃんみたいに光が見えるんじゃなくって
その人の周りの空間の歪みが解る感じ?・・・わかんねぇや。」

「じゃあ何でさっきオレに“この人はダメだ”って言ったんだ?」
「とーちゃんの“気”がこの人に吸い取られているって云うか、流れ込んでいるって云うか・・・
 今はそうじゃないんだけど、さっきはとーちゃんの周りの歪みとこの人の空間の歪みが重なって・・・
ん~うまく説明できない。」
 未来君は首をひねっているけど、アタシと目が合うと逸らしてしまう、赤くなっちゃって可愛い!

「あのぉ・・・それより一家そろってと云うか、皆さん全員で、一希さんとの交際を認めていただけるんですか?」
 なんか・・・ちょっと・・・みんなそれがどうした?って感じで見てる、聖羅さんなんか首を傾げてるし。
「聖羅にしてみれば、パパというより“ママのかじゅきさん”って感じなのよね」
「俺もどっちかというとそうだな、とーちゃんって呼んでるけど、ママの兄妹って云う感じ。」
「あら、ワタシは違うわよ、かじゅきは永遠の恋人!」
 聖羅さんも未来君も“勝手に言ってろ”みたいな感じで“ケッ”という

「でも聖羅と二つ違いって云うのは、なんか引っかかる、
たまたま志津香さんだったというのは解るんだけど・・・同年代としてはね。
 本当に聞きたいわ、一体パパのどこが良かった訳?白髪はあるし、腹は出てるし、体力ないし、オヤジだし・・・」
「俺もそう思う、こんなに若くて、すっごい美人で、綺麗な髪をしている人が何でとーちゃんと?大地震が来るんじゃないかと心配になるよ。」
 二人ともひどい言い方・・・
 ってそっちかよ!自分の父親に彼女ができるからじゃなくて、アタシのオトコの趣味の方が問題?
「そんなことないですよ、一希さんは優しいし、思いやりがあるし・・・」
「いや、でもまずは外見だろ?四十八だよ、腹出てるよ、一番最初に外さね?」
 同性はキビシイ!
「おいおい、おまえら、今月の小遣い、やんないぞ!
勝手なこと言いやがって、大石さんがいい!と言ってんだからイイんだ!」
 遮られて、未来君は“このエロおやぢ”と呟いている。
 冴美さんは笑って見てるし・・・
「話を続けるわね、この子達があの夜になんか感じたらしいのよ、特に未来がね。
未来、話してみて。」冴美さんが笑顔で続ける。
「俺もよく解んないんだけど、
とにかく、とーちゃんの周りが歪んでるイメージが夢の中に出てきて、とても寒気がしたんだ。
早いトコ何とかしないとって・・・
 ねーちゃんもそれに近いことを言ってたよね。」
「ん、聖羅も夢の中だったんだけどね、パパの隣の人・・・志津香さんだったのね。
志津香さんの光がピンクからどす黒い赤に変わるの、それと共にパパが小さくなって行くイメージ。」
「この子達が起きて来てそんな話をするもんだから、ワタシも心配になっちゃって。
それで、朝電話したんだけど、そしたら憑物のイメージが浮かんだの。」

 なんかスゴイ親子。

「志津香さんちょっと手を見せてくれる?」
 未来君があたしの手を取った、その瞬間。
「痛い!」
「イテッ!」
 なんか、静電気にでも触ったような感じで痛かった。
 未来君はしばらく首をかしげていたようだったけど、
「もう一回いい?」
 今度は痛くなかったが、未来君の手はとても冷たかった。
 まだ未来君は首をかしげている、
「今、俺の手は冷たいよね、これではどうです?」
「暖かくなってきました」
 まだ首をかしげている
「これは?」
「変わりませんよ」
「これは?」
 何回かこれを繰り返したあと首をひねりながら
「とーちゃん、この人憑巫みたいだ」と言った、何?“よりまし"って?。
「この人ダメだって言ったけど、俺の間違い、とーちゃんなら大丈夫だよ。下手に力のある人だとは吸い取られるだろうけど。」
「そうかぁ、憑巫だったんだぁ、だから光の色が固定されないんだ。
揺らめくからなんだろう?と思ってたのよ。」
「おまえたち、すげ~な、そんなことも解るんだ。」と一希さんが嬉しそうにしている。
「だとすると、かじゅきとの間にできる子供はすごい子供になるわね」と冴美さんが言う、
 すごい子供ってどんなの?
「おいおい、みんな、大石さんを怖がらせるなよ。大丈夫だからね、オレがちゃんと守るから。」アタシは一希さんにうなづく

 なんかものすごいことを言われ続けた気がする、一希さんと付き合うってこういう事?冴美さんすごい!アタシくらくらしちゃった。

 そのあと聖羅さんとは学校の話や、好きなタレントのこと、勉強のことなどを話しすっかり打ち解けたような気がする。
 ただ、それ以外のことも読み取られている気がしたのは気のせい?・・・
 未来君は相変わらずアタシを見ると赤くなってたけど。
「冴美さん、ほんとにアタシ、一希さんとお付き合いしてもいいんですか?」
「どうして?好きなんでしょう?いいわよ、時々返してくれれば、それでいいわ!」
 なんか調子が狂う・・・
「二人で、何オレの事を言ってるんだ?オレは物じゃないぞ!貸し借りとかいうなよ!」一希さんはちょっと不満そう。
 でも鼻の下が伸びてますわよ!

 お昼も、みんなでお好み焼きを作って食べ、楽しい一日を過ごした夕方。
 楽しい日曜日、家に帰りたくない、“独りの家に帰ってもつまんないしな~”と少し甘えて、困らせてみた。
「泊まれば?そんなに家が遠いわけでもないんだし、教科書を取りに戻ってもそんなにかからないでしょ?」と冴美さんが事も無げに言ってくれた。
 一希さんは渋い顔をしてたけど、あたしは喜んでお言葉に甘えた。
「ただし、ワタシ達と一緒の部屋で寝るのよ?かじゅきの部屋は未来と一緒だから無理!」と釘を刺されてしまった。
 ま、しょうがないか。
 冴美さんが荷物をとりに車を出してくれるって言うし、ちょっと冴美さんと女のお話もできるかな?
「じゃ、いってきま~す」

 アタシはウキウキ!


--------成長--------


「なぁ、未来よ、さっきの話だけどな、彼女が憑巫って云うのはどういうことだ?」
 大石さんが出て行くと、さっきから気になっていたことを聞いた。
「なんかね、引っ張られるって言うか、吸われるんだよ、だから最初にダメだっていたんだ。」
「なにが?」
「なんだろう?よくわかんないんだ、とーちゃんは何も感じない?」
 確かに不思議な感じはする、一番初めに彼女は“あたしの中に何かが入った”って言ってたよなぁ
「・・・憑物落しをする前にな、彼女の体にものすごい数の魍魎が取り付いてたんだ、どこでこんなにって思う位な。」
「聖羅もねぇ、なんか普通の人と違う感じがしてるの、どこがどうとはいえないんだけれどね?
パパさぁ、志津香さんの中に座敷わらし、置いてるでしょあれ変化してない?」
「あ、俺もそう思った、なんかねぇとーちゃんの座敷わらしじゃないんだよ、力強いって言うのかな・・・
パワードスーツか何か着てる感じ?本質は違わないんだけど、パワーアップしてる。」
「パパ、志津香さん、ヤバくない?何かに巻き込まれてるんでしょ。」こいつら鋭い!
「まぁね、今は言えない、そのうちにな・・・」とりあえず誤魔化しておこう。
「とーちゃんのやる“憑物落し”って見たことないけど、要は自分の中に入れるんだろ?
そん時何かする?かーちゃんみたいにマントラ唱えるとか・・・」
「あぁ、するよ、パパは祝詞を唱える。
でも何でもいいみたいだな、たまたま祝詞だと早く終わる感じがするだけで、ママみたいにマントラでもできないことはない。」
「志津香さんはね、それがなくても自然にできるみたい・・・意識してないな、きっと。しかも択んでるっぽい。
 帰ってきたら二人並んで座ってみてよ、歪みを詳しく見てみたい。
 さっきは斜めに向い合ってたからわかんなかったけど、今度は何か解るかも。
 あと、とーちゃんさ、これ・・・」
 未来がいきなり私の耳に両手を当てるとマントラを唱え始めた。
 掌から何かが私の中に入ってくる、マントラが帯のようになっているみたい?おいおい、おまえいつこんな亊、覚えたんだ?
 すげぇ、未来。冴美のジュースより効く。ん、ってことはこれはおまえの“力”じゃね~か、私につぎ込んじゃまずいだろう。
 そうこうしているうちに掌が離れた、未来は粗い息を吐いている。
「すまん、未来。でもすげ~よ、おまえのパワー」
「あったりまえじゃん、俺は若いんだぜ、まだテクニックはとーちゃんにかなわないけど、もうパワーなら負けない!」
 なんか、嬉しい、子供の成長ってこんなに嬉しいものなんだ、やっぱり家族っていいね!
「んでも、もうダメ、俺、寝る!」
「ママのジュースは?」
「んなもん飲めるか!俺よくあれをとーちゃんが飲んだって感心してるんだぜ。
あれだけは絶対ダメだ、じゃ、お休み」
「おやすみ」

 未来が部屋に引っ込むと聖羅が、
「何したの?未来。」
「パパにパワーを注入したんだ。」
「そんなことできるの、あいつ」
 感心したと云う顔をしている。
「そうみたいだ。」
「聖羅もなんか開発しよ~っと!」
「いいよ、そんなこと、でもおまえ、あんまり人の心読むなよ。」
「あれは違うよ!志津香さんの心が入ってくるの、聖羅の中に。
ほかの人じゃアソコまで判んないよ、だから志津香さんて不思議って言ったの。」
 そうなのか?
「心が入ってくるってどういうことだ?」
「なんかねぇ・・・嬉しさだだ漏れって感じで、もうこっちが赤面するくらいパパへの思いが流れ込んでくるのよ、“聖羅、困っちゃう”ってなもんよ!もう、このエロオヤジ!」
 こらこら、仮にも親だぞ!血はつながってないけど、でもそうなんだ・・・
「あとなんか感じない?」
「聖羅はそれ位かな?ママはまたちょっと違うみたいだった、実際に前に会ってるからかも知れないね。」
「なぁ、聖羅、パパ大石さんと付き合ってもいいかな?」
「いいんじゃん。今までパパが聖羅や未来やママのことで苦労してきたことは知ってるし、ママもなんか志津香さんが気に入ってるみたいだよ、
それにあんな綺麗なお姉さんができると嬉しいし。
 未来は一目惚れみたいだったけどね。」
「未来が?」
 聖羅は楽しそうにうなづいた。
「気がつかなかった?未来は志津香さんと目が合うと赤くなるんだよ。」
「でもさっき手を握ってたりしてたじゃないか?」
「あの時は真面目だった、きっとパパの役に立ちたくって必死だったんじゃないかな?」
 成長著しいなぁ、でも彼女は渡さない。

 大石さんが憑巫?だとすればあれだけの魍魎を引き込んだ訳が解る、でも、八歳から出入りしているのになぜ今、急に憑巫になった?
 あれか“初めて出会った夜に何かが入ってきた”ってやつ。
 でもあの時私は何も送ってないぞ?吸われた感じもしなかったぞ?
 何かが私の力を使って、彼女中に入り込んだのか?でも悪意は感じられないよなぁ・・・むしろ座敷わらしをパワーアップさせてくれてるって感じ?

 なんか大石さんて不思議ちゃんだな~

--------妻妾相側む--------

 アタシは冴美さんと車の中、なんか変な感じ“妻妾相側む”ってこの事を言うのよね。
 ううう、沈黙が怖い、耐えられずに声を掛ける。
「冴美さん。プライベートな事聞いてもいいですか?」
「ん、なぁに?」
「どうして一希さんの赤ちゃんを産まなかったんですか?」
「またストレートな質問ね!」笑って言う。
「すみません」
 アタシは申し訳なく思ったけど、やはり聞いてみたかった。
 聖羅さんと未来君は父親が違うと云うけど、まぁ似たような時期に生まれて、仲のいい姉弟よね、これに一希さんの子供が加わっても違和感無いと思うんだけど?
「・・・かなりデリケートな内容ね、志津香さんは聞きたくないんじゃないかと思うようなことも含まれるけどそれでもいい?」
「デリケートな内容・・・ですよね、
でも、こんなに仲がいいのに、一希さんを愛してるんでしょう?だったら子供が欲しいって思わなかったのかな?って。」
「あなたは、欲しいの?かじゅきの赤ちゃん。」“赤ちゃん”って言われると照れちゃう。
「何赤くなってんのよ、その顔じゃまだHはしてないわね。かじゅきも一応は考えてるんだ。」
「解ります?」
「解るわよ。あ~、あなたも“南の島の話”を持ち出されたクチね!
あのボケ、イマドキの女の娘があれに乗るとでも思ってるのかねぇ?」
「ちょっと、グラっと来てます、アタシ・・・」
「ここにいたか・・・」そういって大声で笑った。
「アタシも最初はダッセーとか思いましたけど、なんていうか実現できない夢じゃないでしょう?
割とお手軽にかないそうで、あのシチュエーションは確かにあこがれると思いますけど?」
「今度それ、聖羅に言ってごらんなさいな。ものすごくコキ下ろされるわよ。
“アンタバカ?~”とか言われるわね、きっと。」
「そんなものなんですか?」
「まぁ、あなたの夢を壊しはしないけど・・・そうねぇ、この夏にでもやってみれば?」
「はぁ・・・」
 二人で旅行に行ってもいいと?

 冴美さんは笑顔でアタシをチラッと見た。
「あ、さっきの話に戻すね、
かじゅきの子供が欲しいと思わない日はなかったわ、でもね、彼が嫌がった。
“俺の子ができたら、聖羅と未来の父はどうなるんだ!”って言うの。自分の子にだけ父と母が揃う事になるのが嫌みたいだったの。
 まぁ、それだけ聖羅と未来を愛してくれてるんだと云う事なんだと思うんだけどね。
 今はもう“子供を作る”なんてことはワタシたちの間では昔の話だけど
そうねぇ、彼の前では“親”と言うのがタブーなのかもしれないわね。
 それにね、彼とセックスするのって、なんか違和感あるのよ。」
「違和感?って、どんな?」
「私たちって幼馴染と言うより、親子みたいなのよ、
だって初めて会ったのは三歳でしょ、まだアタシはオムツも外れて無かったって言うし・・・
 一緒にお風呂に入って九九を覚えたりとか、寝るときは子守唄歌ってもらったりとか記憶があるのよ。
 だから真面目に子供を作るためのセックスをしようとすると二人ともテレちゃってダメ、かじゅきも立たなくなっちゃうし。
それに素っ裸で抱き合うと、心がつながっちゃうって言うのかな?
 ・・・本気で抱かれると、体より先に心が満足しちゃうの。それ以上する気にならない。」

 素っ裸かぁ、今のままじゃ無理ね。
 あぁ、あたしもそんな感じ方をしてみたい、それと“子守唄”か~。
 いいな~、今度おねだりしてみよう。
「あ、それ解ります。一希さんの腕の中って・・・なんだろう?
安心とか、ホッとするとかそんなものじゃなく、もっと深いところまで染み込んでくるものがあるって感じですよね。」

「こらこら、女房にそういうこと言う?
でも、やっぱりしたいときもあるの、そんなときは絶対妊娠しないのよね、不思議だけど・・・
そういう時はアタシから誘うんだけどね・・・あ~思い出しちゃった、恥ずかしい!」
 冴美さんは真っ赤になりながら話してくれる。

「どんなふうに誘うんですか?」
「聞きたい?」
 アタシは力いっぱいうなづいたけど自宅に着いちゃった。イイとこだったのに、しょうがない。

 アタシは家に駆け込むと急いで荷物を詰め込む。
 教科書の入ったバッグと、パジャマとかお泊りセットを入れたバッグ。
 冴美さんは“そんなもんでいいの?”と聞いてくる、こんなもんですよ?
 車に乗り込み、さっきの話をせがむ
「さっきの続き!」
「そんなに聞きたい?恥ずかしいのに・・・」
「いいじゃないですか、奥様のテクニックは参考になります。」
 ちょっと恥ずかしいけど、とても知りたい。これからの事もあるし・・・
「一番いいのはねぇ、ベットにもぐりこんで後ろから抱きつくの、そして耳をね、甘噛みしながら“して”って言うの・・・
あ~恥ずかしい、これ以上は実践あるのみ!よ。
ところでさぁ、ホントさっきの子供たちじゃないけど、かじゅきのどこがいいの?貴女みたいな美人が・・・引く手あまたでしょうに?」
 へっ?何でそんなこと聞くの?
「それそのままお返ししますわ。
冴美さんだって、おんなじじゃないですか?」
「そんなことは無いわよ、かじゅきはワタシにとって、父であり、兄であり、恋人であり、旦那。
好きになる以前からワタシの傍にいたんだもん、好むと好まざるとに関わらず、ワタシはかじゅきと一緒になるのは必然だったのよ。」
 そんなもんなのかな~
「・・・アタシは・・・一希さんに全てを見られた、というか全てを曝しました。
でもそれでもいいって手を伸ばしてくれた、だからその手を掴んだ。
もう離したくないと思ってます・・・すみません、奥さんの前で・・・」
 冴美さんはあたしの髪を優しく撫でて微笑んでくれた“いいわ”と言って。

 マンションに着くと、みんなで夕食の支度をした。
 
 今日は一日中ここで過ごした。
 食事もこの部屋、おいしいし、一希さんはいるし、冴美さんも聖羅ちゃんも未来君も、みんな優しいし、幸せってこんな感じ?アタシ邪魔じゃないの?
 考えてみたら変な状況よね、一希さんの奥さんと仲良くなってるし、子供たちにも嫌われてないみたいだし、それどころか“彼女になってもいいよ”みたいな。

「志津香さん、靴は玄関に出しといてね!」夕食の支度をしながら冴美さんが声をかける。
「靴?」一瞬何のことかわからなかった。
「学校用のローファーよ!バッシュで行ってもいいの?」
「いけない!忘れた・・・」すると奥の方から聖羅ちゃんが、
「聖羅の貸したげますよ、サイズは?」
「3!」
「じゃぁ、聖羅とおんなじだ、よかったね!」
「でもそしたら、明日また来なくちゃいけないわ。」
「いいじゃん来て。色々、話しましょうよ。そっちの高校の話とか聞きたいです。」
「こらこら、聖羅、大石さんは君の友達じゃないんだから、いいかげんにしなさい。」
 アタシを近づけたくないって事?考えすぎかな?
「パパが独り占めするのはずるい!」
「ずるいってなぁ・・・」
「アタシ、また来てもいいですか?」
 冴美さんを向いて話し掛ける。
「もちろんいいわよ。色々とかじゅきのこと教えてあげるわよ。」
「だからイヤだって言ってるのに・・・」
 なるほどそういうこと、独り占めしたいのと、冴美さんから情報が漏れるのがイヤなのね、うふ、かわいい!
 
 友達ん家にお泊りなんて初めて、まぁ正確にはお友達ん家じゃないけど。

 お風呂から上がると一希さんの目が輝いてたわ、普段はみんなすっぽんぽんでお風呂場に向かうんだって、変な家族。
 アタシのお風呂上り、艶っぽい?二人きりになったらたっぷり見せて、あ・げ・る・わ!
 あ、聖羅ちゃんに考えていることがばれたみたい、赤くなっちゃってる、ごめん!
 お風呂から上がるとお布団に雑魚寝しながら、冴美さんや、聖羅ちゃんと色々女の子話をしちゃった。

 翌朝、アタシは一希さんと二人でマンションを出た、流石に今日は手をつなぐことはできなかったけれど、それでも幸せな朝だった。
「早くないですか?」
「そうでもないよ、大石さんこそ遅刻しない?」
「アタシは大丈夫。」
 あ、嫌なことを思い出しちゃった。話しておいたほうがいいかな?聞きたくないだろうなぁ、どうしよう・・・
 そんなことを考えながら歩いていたら、何かに躓いて転んじゃった。
「大丈夫じゃないじゃん、怪我は?何考えて歩いてたの?」
 ちょっと膝をすりむいただけ、大した事無いわ。でも一希さんスルドイ、やっぱり話しちゃお。
「・・・明後日、また、アッチに行かなきゃならないんです。」
 顔が見られなかった、絶句してるのが解る、やっぱり言わなきゃ良かった。
 一希さんは絆創膏を取り出すと突っ立っているアタシの膝に貼り付ける、そのとき傷口に優しくキスをしてくれた。
 やっぱり怒ってる?
「・・・やめてもらえないんでしょう?」
「・・・ええ・・・」
「なら、水曜日、作業所で待ってます。また取り憑かれていたら落とします。辛かったら抱きしめてあげます。それぐらいしかできませんが・・・」
 嬉しい。アタシは無理やり手をつないだ。
 駅までの道を二人で少し速めに歩いた、遅刻しちゃう?一希さんはちょっと赤くなってたみたい。



警告

この小説には18歳未満が閲覧するのに不適切な表現が含まれるので未成年の閲覧を禁じます。

あなたが18歳未満であるなら、ただちにYahoo!Japan など、他の未成年が閲覧しても差し支えのないサイトへ移動してください。























--------アタシの痛み--------


 アタシはおなかがすいて目がさめた、外はもう真っ暗、今何時だろう?
「一希さ~ん、か・ず・き・さん」アタシは小さい声で呼んでみる、反応ナシ。
 疲れてるって、冴美さん言ってたもんね、でもアタシ、おなかが減ったの!なんか食べた~い。
 彼はアタシの胸にしがみつくように眠っている、至福の一時ってヤツ?でも空腹が勝ってしまった。
「おなかすいたよ~、か・ず・き・さ~ん」今度は耳元で囁く、
 すると彼の手があたしの背中に回り強く抱きしめてきた、なんだ起きてたのか。
 いやいやするように顔をおっぱいにこすりつける。

 あ、ダメ、感じちゃう・・・
「こらこら、エロイよ。一希さん」
「ん~、もう少しこのままでいて・・・」
 あたしは彼の頭を強く抱きしめる、顔が胸に押し付けられ苦しいはず。
「・・・ん、ん、ん、・・・」
 言葉にならない、苦しがってるから許してやろうか
「ひどいなぁ、死ぬかと思った。」
 顔をずりあげて優しくキスをしてくれる、あぁ力が抜ける、
 今度は下唇を甘噛み、蕩けそう~、彼の上唇に舌を伸ばしたら、その舌も甘噛みされた、アソコがジンジンしちゃう、アタシを食べたいの~?
「実はオレも昨夜から何も食べてないんです。お弁当を買いに出たら大石さんと逢っちゃったんで・・・」

 彼の腕時計は午後十時を示していた。
「もう十時か、お父様は帰られてるのでは?」
「いけない忘れてた・・・でもケータイに連絡は入ってないから今夜も遅いのかも?」
「でも、一度帰ったほうがいいですよ、未成年が夜遅くまで、こんな中年男と一緒に居ちゃいけない。」
 ちょっと嫌味な言い方!
「それ、本気?」
「・・・な訳ないでしょう?いつでも一緒にいたいですよ。」
 そう言うとまたキスをしてくれる、

 イジワル!

「でも、本当に一度帰ったほうがいいですよ、明日は日曜日です、ゆっくりできるじゃないですか。
ホントはこのままお泊りしてもらえると嬉しいですけど、ケジメはつけないと・・・
本気でお付き合いしたいですから。」
「冴美さんはいいんですか?」
「今は、冴美の事を話題にするのはやめましょう、
この前も言ったでしょう?オレと居る時はオレだけを見て下さいって。
それに冴美の事を気にしなければならないのはオレの方です、貴女が気に病んでも択んだのはオレですから。
 択んだ者が択ばれなかった者に対して負い目を感じるのは当然ですが、
 択ばれた者が択ばれなかった者に対して負い目を感じる必要はないんです、
もしそれを感じるならそれは択ばれた者の傲慢です。」
「なんかむずかしい・・・」
「だ・か・ら、今はオレだけを見て欲しいって事!」
「ん!」

 アタシはゆっくりと起き上がり明かりを点けようとした。
「あぁ、明かりは点けないでください。」
「どうして?」
「多分、とんでもない顔になってると思うんで・・・憑物落しの後遺症みたいなもんです、お願いします。」
「アタシ気にしないよ!どんな顔だって、一希さんだってアタシの姿を見たでしょう?でもいいって言ってくれたよ!
アタシだって一希さんのすべてが知りたい・・・ゼッタイ嫌わないから。」
「でも、今、キスしてたことも後悔するよ。」
 アタシはかまわず明かりを灯けた、一希さんは咄嗟に布団をかぶった。
「ごめんなさい、でもこれからもあるかも・・・
アタシの秘密の部分を見せることもあるかも、一希さんの見られたくない気持ちはよく解るわ、でも一緒に居たいから、受け入れたいから・・・お願いします。」
 最後のほうは涙で声が出なかった。

 一希さんはゆっくりと布団から顔を出した、アタシは息を呑んだ。

「いやな顔でしょう・・・」そう言うと明かりを消した。

 アタシはきっと怯えた顔をしたと思う、嫌悪が顔に出たかもしれない。
 これって、ひょっとして、記憶も?

「さぁ、今夜はお帰りなさい。明日メール入れます。」
「あ、あの・・・」
「お願いです、今日は帰ってください。明日になれば元通りになりますから・・・。」言葉は搾り出すようだった。
「違うから!一希さんはあんなヤツとは違うから!」
 布団にしがみつき、思わず大声をあげちゃった。
 でも一希さんは“お願いします”を繰り返すばかりで、アタシは仕方なく家に戻った。



 見られるのを拒んだ顔はあのジジィの顔だった、デフォルメされ嫌らしさが強調され・・・でも目だけが一希さん、それが悲しい。

 家に帰るとアタシはベッドに倒れこんだ。

 罰だと思った。

 アタシの秘密を見たのだって偶然だったんだ、望んで見た訳じゃなかった、むしろ見たくなかったんだ、でも仕方なかった。
 だから、辛さを知っているから、アタシの告白だって止めさせようと気遣ってくれてた。
 そう、いつだってあの人はアタシのことを考えてくれていた。
 なのにアタシは勝手な言い分で無理やり迫ったんだ、
 
“アタシも知られたんだからアナタのも教えて!”

 一希さんは、アタシが知った後のことまで心配してくれてたんだ、もちろんあのジジィを嫌ってることを、生理的に嫌っているのも解ってた、だから見せたくなかった。
 何をされたか、アタシがどう反応したか、みんな判ってたから、アタシの感覚が判っていたから。

 ふと、窓の外を見る、作業所に明かりは灯らない。
 
 アタシ、バカだ・・・自分で自分の傷口を広げて、その痛みだけを一希さんに背負わせちゃった。

 サイテー。

 謝ったら許してくれるかな?もうダメかな?

 一希さんが恋しい・・・

 アタシいつの間にか眠ってたみたい、メールの着信音で目が覚めた。
 今、日曜日午前六時二十分
 一希さんだ!でも中を見るのが怖い、別れのメールだったらどうしよう。
 いいや、みっともなくても構わないわ、すがり付こう。
 アソコまでみっともないとこ見られてるんだもん今更よね、繕ったってしょうがないわ。

From:
 KAZUKI
Titel:
 おはよ~>^_^<
Object:
 起きたらPHSに電話ください。

 なんだろう、やっぱりお別れを言われるのかな?
 涙が一粒こぼれた、こんなに一希さんがアタシの中で大きくなってるとは思わなかった。
 別れたくない、そばにいたい、いて欲しい。

「もしもし、志津香です。」
「おはよう、早いね。起こしちゃった?」
「・・・・」 
 次、なに言われるんだろう、心臓がバクバクいってる。
「冴美がね、朝ご飯食べませんか?って、七時までに連絡くれたら作って待ってるって言ってんだけど、どぉ?
あ、顔はもう元に戻ってるから。大丈夫、嫌な思いはさせない。」
「怒ってませんか?」
「ん?何を?」
「だって、アタシ、昨夜・・・」
 怒ってない、嬉しい、泣けてきちゃう
「泣かなくてもいいよ、でも・・・
あぁ、それより、お父様は?」
 そういえば、昨夜は帰ってないみたい、どうしたんだろう?連絡は必ず入れる人なのに・・・
「昨夜は帰らなかったみたい。」
「じゃぁ、まずいかな?」
「ううん、こっちから連絡してみるから、もう少し待っててください・・・一希さん?」
「ん?」
「・・・うれしぃ、もう逢ってくれないかと思った。」やっぱり涙声になっちゃう
「そんなことないですよ、でもお互いに嫌がることはやめましょうね!
まぁ、その話は逢ってからでいいじゃないですか、
じゃぁ、冴美に連絡しときます。
では、後で・・・」
「ハイ!」

 なんか元気が出ちゃった。
 さーてっと、父様に連絡を入れてみるか!
 とりあえずメールを入れておこう、友達のところに出かけるでいいわよね、冴美さんの名前を出せば何とかなるわ。

 メールを送って何分もしないのに電話が入った、えっ、父様から?もう?どうしたの今日は、まだ朝早いのに。
「はい、大石です。
ああ、父様?昨夜はどうなさったんです?」
「いやぁ、すまない、翁公が一席を設けてくださってな、それで、今度代表取締役になることが決まったんだ。」
 へぇ、名実ともに社長ですかぁ・・・
「それは、おめでとうございます。」あ、嫌な予感
「まぁ、後で言おうと思ったんだが、来週の水曜日に、行ってくれないか?」
「だって、しばらく勘弁してくださるように言うって・・・」言っても無駄ね・・・
「おまえの口から聞きたいと翁公がおっしゃるんだ。」
 あのエロジジィ・・・
「わかりました、来週の水曜日ですね。」
「ああ、たのむ。
それから今夜も帰らないから。」
 そして電話は切れた、せっかくの楽しい日曜日になると思ったのに。

 とにかく作業所へ行こう!
 今日は何を着ていこうかな?
 服を選んでいるうちになんか気分が良くなってきちゃった。
 そろそろハイネックは暑いのよね、まだ目立つかな?鏡に映してみる、うん大丈夫だわ。
 オーバーオールの短パンにちょっとラメの入ったTシャツ、で、Gジャン着て行こう、白のソックスにバッシュ、髪は緩いみつあみ。よ~し、高校生!完璧!
 そうだ、またそう~っと行って一希さんを驚かせてやろう、ひょっとするともう一度、寝てるかも。今日は健康そうな女子高生で迫るわ!

 静かに玄関を開ける、事務室には・・・いない。休憩室にもいない、やっぱり二階ね!足音を忍ばせて、二階へ上がり寝室のドアをそっと開ける、やっぱりまだベッドにいた!
「一希さん!」
 アタシはベッドに飛び乗り、彼に覆い被さった。
「わぁ、びっくりしたぁ」
 アタシはへへへと・・・一希さんがいきなり老けたように感じた。
「どうしたんですか?疲れているみたい。」
「ん、ちょっと・・・」
「昨日の後遺症ですか?」
「うん、まぁ、」言葉を濁した。
 こんなになっちゃうんだ、アタシのために、ありがとう。
 嬉しくて涙が止まらない。
「泣かなくてもいいよ、これは俺がやらなくちゃいけない事なんだから。」
「でも・・・」
「泣かれるほうが辛い、泣いて欲しくない、いつも笑顔で・・・って言うのは無理だろうけど、オレといる時ぐらいは笑顔でいて欲しい。
大石さんの笑顔のためならオレは大丈夫。」
「そんなこと言って、ほかの女の人を口説いてるんでしょう?」
 アタシもたまには茶化してみたい。
「そう思う?」
 アタシは一希さんの頬を両手で包み込む、思わず期待して自分の唇を舐めた。
「ん~艶っぽい」一希さんが呟く。
 待ちきれなくて、覆い被さるように、くちづけた。
 甘いくちづけ・・・これだけでもう体が蕩けちゃう、ショーツの替え持ってきて正解!あ、でもこれから一希さん家に行くのか・・・ちょっと複雑。
 せわしなく動く舌、口蓋の隅々まで舐めようっていうの?アタシの舌を強く吸い上げたり甘噛みしたり、どうしたの?今日は積極的ね!
 しばらくしてやっと開放してくれた・・・
「では出かけましょうか」
 あれ~?服、着てる!
「え、服・・・」
「もちろん着てますよ、いたずらっ子が上がりこむと思ってましたから」
 そう言ってにっこり微笑む、バレてたか。
 
 ん~そつないなぁ、こんなことされたら普通グラっとくるでしょ。