Q

無名抄の1部で 鶉鳴くなり とありますが、このなりはなぜ伝聞推定なのでしょうか?鳴くが連体形なので断定じゃないのですか?

 

A

「鳴く」はカ行四段活用動詞です
「鳴く」は、終止形と連体形、いずれの可能性もあります
形からだけでは、終止形とも連体形とも判断できません(形だけでどちらかであると断言するのは誤りです)
【夕されば野辺の秋風身にしみてうづら鳴くなり深草の里】
この歌の「なり」は、形上は【終止形「鳴く」+推定「なり」】【連体形「なり」+断定「なり」】のいずれも可能性はあります
ただ、古来、前者の解釈が一般です(後者の解釈はほぼ皆無です)
判断基準は、「鳥を目視しているなら断定、鳴き声を聞くだけで目視していないなら推定」です
詩歌で野生の鳥を詠む時、鳥の種類や詠む状況を考慮して、解釈は変わります
代表例を挙げますと、渡り鳥の雁などは上空を飛行する姿(「雁行」という言葉もあります)を目視して詠む場合が多く、鶉については歌人が目視してはおらず、鳴き声だけを聞いて詠む場合が多いと考えられてきました
この歌の場合もそれで、ふつうは「なり」を推定と考え説明します