Q

宇治拾遺物語 から 亀を買ひて放つ事で「取り持ちて、親のもとにこの帰らぬ先にやりける」とあるのですが なぜ亀は、子より先に親の元へ銭を返しに行ったのですか?

 

A

面白い発想の疑問ですね
初めて見ました
その発想に感心しました
超現実的な説話ですから、リアルに考えても仕方がありません
説話的に言うと、
【説話話者は、不思議体験を共有する他者を説話内に必要とした】
ということです

子に返すと、子は親から与えられたミッションに戻る事ができます
しかしそうすると、不思議体験は子一人の中で収まってしまい、他者に共有されません
子が誰かに語るとしても、それは事後共有にしかならず、直接共有ではありません
それでは説話としての訴求力が弱くなってしまいます
説話話者には、この不思議体験を子以外の他者に共有させる必要があった訳です
五十貫の銭とミッションを共有する他者は父一人です
だから、説話話者は、亀に五十貫を父に返しに行かせた訳です
そもそも超現実な設定ですから、亀が子の父の家を知っている理由説明など説話話者には不要なのです