二人ぼっちのブッククラブ:トマス・モアのユートピア、その一 | ぞうの みみこのブログ

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 どーです、この目力!
 Sir Thomas More(1478-1535)
 (”ユートピア”の作者のトマス・モア)

 


9月の最終日のブッククラブは”ユートピア”だった。でもみんな忙しくて、結局来たのは私とホストのカサウンだけ。また二人きりのブッククラブになった。
 
”でもみんなちゃんと断りのメールをくれたんだよ,ほら” 

と、カサウンは手元にとったタブレットを見せてくれた。いっぱいメールが届いているみたいだ。

”いいサインね。きっと来たかったけど来れなかったのよ。もし、もとから関心とか無ければわざわざメールしたりしないだろうから。”

”そうだよ。新学期や新しいシフトが始まってみんな忙しくなったんじゃないかな。ぼくもぼくも先月までのようにゆっくり時間も取れなくなったし。”

カサウンは今年9月からある大学の大学院に通い始めた。哲学や歴史に関する研究をして、ゆくゆくはどこかの博士課程に入る計画をしている。

カサウンとは昔ながらの友達、多才な人だ。キーボード奏者としてバンドを率いているかと思うと、

チェスを教えに行ったり、教会でオルガニストとして演奏をするかと思えば、哲学に関する本を執筆したりしている。

私達は作曲専攻の学生同士として出会った。ニューヨーク市立大学で、お互い同じ作曲の先生に師事していた。兄弟弟子だったのだ。


わたしらの音楽上のおとうさんである、
作曲家、デイビッド・デル・トレディチ先生(David Del Tredici)



カサウンの見た目のイメージで言えば,オバマ大統領とか、俳優のデンゼル・ワシントン系と言った所か。いつもトラッド系のこざっぱりとした身なりをしている。

みるからに育ちの良い、都会的な黒人男性と言う感じ。
(もっとも彼は上述のお二人よりずっと若いけど)

いろんな方面に才能があり、知的好奇心も旺盛である故に、本当にやりたい事をしぼるのに時間がかかったと見える。

同じ大学で作曲専攻したあと、彼は一時期、楽理の博士号を目指し、全米でもかなり有名なある中部の大学院に入ったのだけど、

いろいろあって方向転換。修士だけとって、ニューヨークに戻って来た。でもその大学院にいる間、学部生に音楽の理論の講義をして、ちゃんとプロフェッサーとしても働いていた。

しかたなしに、二人でブッククラブをする事になった。

最初に、わたしはトマス・モアの肖像画の印象が強烈だったと述べた。

”みて、この目の力。誰が見ても普通の男性ではあり得ないわ。それに右目と左目の表情がずいぶん違っている。右目は優しさをたたえているように見える。

一方、左目は厳しくて残酷ささえ感じられる。イギリスで、ヘンリー8世の時代に王様に仕えていたから,宮廷のマナーは身に付いて、スムーズな身のこなしをしていただろうけど、

こころの奥深くにはいろんな複雑な気持ちがうずまいていたのではないかしら。複雑な人格の人だったかも。”

”あ、それからわたしのこと馬鹿と思うかもしれないけど、この絵を見た時、学者や政治家としてはかなりイケメン、と思ったのよ。

あんがい宮廷の貴婦人たちに隠れファンがいたのでは。”

というと、案の定、カサウンに大笑いされてしまった。

まじめなブッククラブでガールトークを炸裂させるわたしのKYぶりに、あきれもせず答えてくれる優しいカサウン。

”あっはっは!!君ってば、ほんとに面白いねー。

でも、史実では彼がつかえていたヘンリー8世こそが、イケメンで女性から見て魅力的な男性というように言われているよ。”


イギリス国王であり、エリザベス一世のパパ
ヘンリー8世(1491-1535)



うーん、史実でどういおうが、私にはこの丸ぽちゃの王様が魅力的には思えないんだけどな、トマス・モアのほうがずっとかっこ良いぞ。

ちなみに両者とも同じ画家の作品。