暑くて、積極的にクリエイティブなことや仕事に取り組めず、だらだらと涼しげなDVDを見ておりました。
どこが”涼しげ”なのかというと、主人公のアリスがクールと言うか、ちっとも笑ったりしないんですな。もちろん演技でしょうが。色は(この時代、カラーが可能であったにもかかわらず)モノクロ。そのへんが私には涼しげに見えました。
これは実写版ですが、他のアリスの映画にありがちな、着ぐるみを着たキャラクターとか、派手な特撮とか、やかましいサウンドイフェクトとかはなく、
フィルムスコアリングはミニマムな感じです。
オリジナルの本では動物や昆虫となっていたキャラクターも人間がそのまま、ビクトリア調の衣装を身に着けて演じています。
そういうのも、お洒落、というかいい感じです。
これより前の、1951年公開のディズニーの”不思議の国のアリス” はカラーで、明るくおてんばな、皆に愛されそうなアリスを中心に、歌ありアクションありでミュージカル仕立て。
この”不思議の国のアリス”とは真逆な感じです。
ディズニーのがファミリー対象なら、これはどう見たって大人の視聴者をターゲットにしています。
シュールで変わった大人達と、それをどこか距離を置いて見つめるアリスと、意味があるのかないのかわからない、とんちんかんな問答。
早熟な思春期にさしかかったお利口な子から見ると、まわりの大人達はこんなふうに見えるかもしれませんね。
モノクロの黒、白、グレーの諧調は白眉です。光と影のコントラストとか、カメラワークによる構図が、どこをみてもぴたりと決まっていて、どこを切り取っても美しい。
それが、ほんわかさせるような癒し系の美しさと言うより、構図が研ぎすまされていて、息がつまるような美しさ、と言いましょうか。一瞬一瞬が凝縮されているような。(すみません、へんな表現で。)
有名な俳優の一人として、ピーター・セラーズが出ています。
音楽はラビ・シャンカーが担当しています。随所にちりばめられたシタールの音が、程よく”不思議の国”の感じを出しています。