ホセの憂鬱、その一 | ぞうの みみこのブログ

ぞうの みみこのブログ

ブログの説明を入力します。

私の年上の友人の一人であるホセ。母国ベネズエラの、ベネズエラ管弦楽団でチェロ奏者を長年つとめたあと、引退。今は悠々自適に趣味でミュージシャン仲間と弦楽合奏したり、システマ(これについては長くなりそうなのでまた別の記事でご説明したいと思います。)
という大変素晴らしい組織をあちこちに作る為の活動もしている。



昔、ニューヨークのマンハッタン音楽院で学び、その後同市のオーケストラで活躍。指揮者にトスカニーニをむかえたこともあったという。マンハッタン音楽院に在学中は、最近残念ながら亡くなられたバーナード・グリーンハウス(1916-2011)に師事していた。グリーンハウス氏は世界でも数少ないカザルスの弟子で、彼とのレッスンの昔話をよく聞いたと言う事だ。



そのニューヨークのオーケストラでしばらく勤務して、母国ベネズエラに帰郷.上述のベネズエラ管弦楽団に入団したのだ。

今でも昔のニューヨークのオーケストラの友人等のつながりがあって、暇を見つけてはニューヨークに遊びにくる。そのたんびに私にもお声をかけてくれて、お茶する。今回のお茶会場所は、アッパーウェストサイドの私のお気に入りのカフェ、アリスのティーカップ
(ALICE''S TEA CUP 紅茶と、イギリス式のスコーンがおいしい。お手頃価格でアフタヌーンティーが楽しめる。)









詳細は忘れたが、たしか今年に入っての事、ベネズエラの首都カラカスで反政府デモがあった。かなり大勢の市民が集まって平和的なデモだったと言う事だが、8000人あまりの市民が参加していた。

見晴らしの良い所で、ホセはそれを見ていたらしいが、そばで世界でも有名な、欧米に本拠地を持つ国際ニュース通信社のカメラマンが写真を撮っているのに気づき、彼といろいろと話をした。



そのカメラマンの彼が言うには、上の人の指示で、報道では800人の市民が集まった、ということにしなければならないとか。



”どーゆーこと、そんなの嘘じゃない。全然違う数字を記事にするの? しかも表向き、民主主義や一般市民の味方みたいな顔してるニュース通信社がそんなことするなんて。そんな歪曲された報道で得をする人というと、あなたの国のバッド・ガイ? あ、ごめん失礼なことを言ってしまった。”



私はホセの国のリーダーは独裁者として知られている事を聞いた事があったのだ。市民の不満がかなりたまっている、ということも。

”いいんだよ。そのとおり。本当のことだからさ。”



”ということは、その報道の自由やら言論の自由をアピールしてるはずの通信社が、おそらく、独裁者にやとわれて、彼にいいような記事を書いてるってことよね.”



”そうなんだよ。それが現実なんだ。”



ホセは寂しそうな顔をした。



ちまたにあふれているニュース。でもその提供者が、たとえどんなに有名ブランドであっても、信頼されている送り手であっても、私たちはいつも行間を読むことを心がけなければならないようだ。このインターネットの時代でも。



with a grain of salt(話を額面通りにとらえず、疑ってかかる)という表現をふっと思い出した。