こちらでよく知られているピアノの生徒向けの検定試験の一つに、ABRSMが
あります。(英国王立音楽検定, Associate Board of The Royal School of Music)
1~8級にわかれていて、数字が増えるにつれ、難易度が高まります。
わたしの見た感じでは、1がバイエルの60番くらい、8が、ベートーベンの初期~中期の
易しいソナタや、平均率の三声以上のフーガが弾けるレベル、といった感じです。
課題曲はどの級も三曲。基本的には、ほぼ1年ごとに出版される、同検定編集の楽譜の中から
選ぶ事になります。A,B,C,のカテゴリーに分かれていて、それぞれのカテゴリーから一曲ずつ。
Aがバロック、Bが古典派からロマン派、Cは印象派から、20世紀、現代曲。
ということは、初心者の(一級とかの)子供でも、現代曲を弾くのですよ。これっていいと
思いませんか?
私の生徒の一人が6級を目指しておりまして、課題曲を決めるときに、ぱらぱらと楽譜をめくってみたらなんと、Cセクションのなかの一曲が武満徹さんによるもの。
タイトルは”Clouds"で、説明をみると、子供のために書き下ろされた曲集の一つのよう。
彼女に、(初見で、ちょこちょこ間違いながら)Cセクションをそれぞれ、弾いてみせて、
”どれにする?”と聞くと、躊躇せず、”Clouds"を選びました。なんだかうれしかったです。
意外でした。こんなところで武満さんの曲に会えるなんて。かんじんの音楽はどうかというと、
(眉間にしわ、無調の、不協和音てんこもりの”ザ、現代オンガク” てな感じとはほど遠い、)
初期ドビュッシーを彷彿させるサウンド。テンポゆっくりで、タイトル”雲”を感じさせる
穏やかで、ちょっとユーモラスな味の或る曲でした。来月が試験。私の生徒よ、
Good luck.