サヴォンリンナ・オペラ・フェスティバル | ヨーロッパの音楽祭

ヨーロッパの音楽祭

クラシック音楽(特にドイツ・オーストリア系)が大好きです。
ヨーロッパの各地で開催されている音楽祭について自分が見てきたところを中心に思うところを書きます。観光のヒントもつけます。

- 白夜の音楽祭 -

サヴォンリンナはフィンランドの南部に位置する人口3万人あまりの小さな街である。この街は同国最大の湖であるサイマー湖に面している。ちなみにサイマー湖の広さは約4,400平方kmあり、これは琵琶湖の約6倍である。このサイマー湖の島に建っているのがサヴォンリンナのシンボルであるオラヴィ城だ。オラヴィ城はスウェーデン統治時代の1475年に建てられたが、18世紀にあったロシア・スウェーデン戦争後にロシアに保持されており、1917年のフィンランド独立以降はフィンランドの管理下にある。なお、このオラヴィ城は人気ゲームドラゴンクエストにでてくる「竜王の城」のモデルになったとされており、日本でも知る人ぞ知る存在である。

<オラヴィ城>


そしてこのオラヴィ城を舞台として、毎年夏に行われている音楽祭がサヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルである。この音楽祭の創設にはフィンランドの国民的オペラ歌手のアイノ・アクテが深くかかわっている。アクテは1907年にオラヴィ城を訪れた時に”湖の上にたたずむロマンチックな城は見る人すべてに感動を与える”とし音楽祭を行うことを決意した。そしてその5年後の1912年の夏にシャルル・グノーの『ファウスト』などの演目によってサヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルは開幕したのである。アクテはこの演目でメインキャストであるマルグリットを演じた。この地におけるアクテの人気は絶大で、ヘルシンキとサヴォンリンナには彼女の名を冠した通りがあり、1976年には彼女の肖像画が切手になっている。



現在のサヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルは7月中を通して開催されており、おおむね6つのオペラと2つのコンサートが開催される。2024年の演目を見てみると、ワーグナーの「ローエングリン」、ヴェルディの「ナブッコ」、モーツァルトの「ドン・ジョバンニ」などがあるが、それに加えてプラハ国立歌劇場による客演のスメタナの「売られた花嫁」もある。

筆者がこの音楽祭を訪れたのは、2015年であったが、小さな街であるため宿の確保に苦労したが、夕方になると着飾った紳士淑女が木造の橋を渡ってオラヴィ城に向かう行列をみておおいに気分が高まったことを覚えている。その時の演目はレハールの「メリーウィドウ」だったが、城の中の広場で、出演者、オーケストラ、そして観客が一体感もって音楽を楽しむことができたと記憶している。

この音楽祭においてもうひとつ特筆すべきことは、それが白夜の季節に行われることだ。7月のサヴォンリンナの日没時間は午後11時過ぎで、日が沈んでからも空は明るい。湖の近くのレストランは深夜まで営業しているところもあり、多くのひとがグラスを傾けながらオペラの余韻にひたっていた。それらを横目に歩いていると、今が深夜であることを忘れてしまいそうで不思議な気持ちになった。


<公式サイト>
https://operafestival.fi/en/ (フィンランド語/英語) 

<アクセス>
・ヘルシンキからサヴォンリンナまで鉄道で4時間前後。

<一言メモ>
・サヴォンリンナは音楽祭とは別に毎年8月に開催される携帯電話投げ世界選手権大会が有名。
・人口3万人の街に音楽祭期間中は7万人が訪れるため、ホテルが不足している。早めのアクションを取りたい。