ミュンヘン・オペラ・フェスティバル | ヨーロッパの音楽祭

ヨーロッパの音楽祭

クラシック音楽(特にドイツ・オーストリア系)が大好きです。
ヨーロッパの各地で開催されている音楽祭について自分が見てきたところを中心に思うところを書きます。観光のヒントもつけます。

- 欧州随一の裕福な音楽祭 -

ミュンヘン(英語:Munich,ドイツ語:München)は人口150万を有する、ベルリン、ハンブルクに次ぐドイツ3番目の都市で、南ドイツに位置するバイエルン州の州都である。ドイツは16の州から構成される連邦国家だが、バイエルン州はその中でも独特で、そこに住む人たちも自分たちがドイツ人というよりバイエルン人だという意識が強い。(現にバイエルン州の正式名称はドイツ語でFreistaat Bayern、直訳すると自由国バイエルンだ。)

使用する言葉も独特で、基本的な日常会話でも以下のような違いがある。
 「こんにちは」
→ 標準語    :Guten Tag(グーテン ターク) 
→ バイエルン方言:Grüß Gott(グリュース ゴット)
 「さようなら」
→ 標準語    :Auf Wiedersehen(アウフ ビーダーゼーエン) 
→ バイエルン方言:Auf Wiederschauen(アウフ ビーダーシャウエン)

バイエルン州は、BMW,ジーメンス、アディダス,アリアンツなど多くの世界的大企業が本社を置いていることに加え、ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとなったとされるノイシュヴァンシュタイン城やボーデン湖に面する風光明媚な保養地リンダウなどの観光資源も豊富にあり、裕福な地域として知られている。サッカーの強豪バイエルンミュンヘン(FC Bayern München)が欧州有数のリッチ・クラブとなっていることもこれらの背景と無縁ではない。

このようなドイツ随一の豊かな地域で行われる音楽祭がミュンヘン・オペラ・フェスティバルである。バイエルン国立歌劇場(Bayerische Staatsoper)やキュビリエ劇場(Cuvilliés Theatre)を中心に毎年6月から7月にかけて行われ、約20プログラムのオペラ,バレエ,コンサートが合計60前後上演される。バイエルン国立歌劇場はワーグナーを庇護したルートヴィヒ2世バイエルン国王のおひざ元で、『トリスタンとイゾルデ』,『ニュルンベルクのマイスタージンガー』,『ラインの黄金』,『ワルキューレ』など多くのワーグナー作品を初演したこともあり、音楽祭でもワーグナー作品の上演が主要なレパートリーとなっている。(したがって、ミュンヘン・オペラ・フェスティバル、そしてそのあとにバイロイト音楽祭にいくのがワグネリアンにとって最高のワーグナー詣となると言われている。)

<バイエルン国立歌劇場> バイエルン国立歌劇場HPより

この音楽祭の歴史は1875年に開催された「祝祭の夏(Festlicher Sommer)」に始まり、現在はバイエルン国立歌劇場が運営を担いBMWやジーメンスなどが”パートナー”として財政的サポートをしている。豊かなバイエルン州と世界的企業がタッグを組んだ音楽祭はこれまでも一流の出演者と豪華な舞台を提供し続けてきた。指揮者ではリヒャルト・シュトラウス,ブルーノ・ワルター,ハンス・クナッパーツブッシュ,カルロス・クライバーなど往年の名指揮者に加え、現役組ではズービン・メータ,キリル・ペトレンコなどが主要な役割を担っている。

筆者にとっては、多く通っている思い入れの深い音楽祭であるが、1982年から1993年まで支配人を務めたアウグスト・エファーディングが演出を担った『ニュルンベルクのマイスタージンガー』と『魔笛』の舞台が忘れられない。特に後者はエディタ・グルベローヴァの歌う”夜の女王”を要する最高の歌手陣での舞台がDVD等の映像で残っているので、興味のある人は観てほしい。

<バイエルン国立歌劇場「魔笛」のDVD >


<公式サイト>
https://www.staatsoper.de/festspiele (ドイツ語/英語) 

<アクセス>
・バイエルン国立歌劇場(Bayerische Staatsoper)やキュビリエ劇場(Cuvilliés Theatre)はミュンヘンの街の中心に位置する。
・羽田空港からミュンヘンに直行便あり(ANA,フトハンザ ドイツ航空)
・鉄道(ICE) ベルリンから約4時間 フランクフルトから3時間15分

<一言メモ>
・ミュンヘン・オペラ・フェスティバルとバイロイト音楽祭は一部が時期的に重なっているので合わせて行くと便利。ミュンヘンからバイロイトまでは鉄道で2時間弱で移動できる。
・ミュンヘンからノイシュヴァンシュタイン城の最寄り駅のフュッセンまでは鉄道で2時間弱。
・音楽祭の季節にノイシュヴァンシュタイン城があるオーバーバイエルン(Oberbayern)地方のドライブはオススメ。ヨーロッパならではの美しい田園風景が続き、世界遺産となっているヴィースの巡礼教会やカンディンスキーやミュンターらの”青騎士”派の画家が拠点とした風光明媚な街ムルナウなど見所がたくさんある。
・ミュンヘンでは名物料理の白ソーセージ(Weißwurst)と豚スネ肉の丸焼(Schweinshaxe)を食べたい。

 

      

<オーバーバイエルンの景色とヴィースの巡礼教会の天井>