『伝説のゴッドファーザー 勝新太郎語録』水口晴幸著 | 加納有輝彦

『伝説のゴッドファーザー 勝新太郎語録』水口晴幸著

コーヒーブレイク

舘ひろし氏等が参加していたロックバンド「クールス(COOL'S)」の初期ボーカリストで、現在も歌手(俳優)として活躍しておられる水口晴幸さんと大変懇意にしておられる知人から一冊の本を紹介して頂いた。

『伝説のゴッドファーザー 勝新太郎語録』水口晴幸著

なぜ、この本を読む気になったかと言うと、この前、知人と昼食を取りながら水口さんのお話になった。

水口さんは歌手としてキャリアを始めたが勝新太郎氏に見込まれ、俳優としても活躍された。水口さんと勝新の関係はオヤジ、息子と呼び合う特別なすごく親密なものであったという。

 知人は、勝新語録を、直接水口さんから伺ったといい、あるエピソードを語ってくれた。
私は、そのエピソードにプロ根性を感じ、感銘を受け知人に聞いた。

「このエピソード、ブログに書いてもいいですか?」

知人は、「この話は、4~5人くらいの席で水口さんから直接聞いた話なので、ちょっとそれは・・・。」と。

 私は「そうですよね。内輪の話が簡単に外に漏れてしまっては、信用を失いますよね。」

こんな経緯があって、知人は上記の本を紹介してくれ、もし、その本の語録の中に、そのエピソードがあれば、レビューとして一部引用して書くことは許されるだろうということで、この本を読んでみたのでした。

 すると、知人から聞いたエピソードを、水口さんは本書でも紹介しておられたのである。

勝新さんには、ホームレスの友人がいたというのである。
ある時、車を急に停めて、つかつかとホームレスのところに行って、煙草をあげたりしていろいろ楽しそうに語っていた。

水口さんが驚いて「あの人誰?」と聞くと、
「友だち。もし映画でホームレスの人が出演するシーンがあったら、あいつにいろいろ心境とか聞けるだろう?」
つまり、先生だというのである。

 勝新は、ホームレスは、かつて経営者だったかもしれない。そのように想像力を働かせて上から横から下から眺めて学んでいたというのである。

「我以外皆我師」を地でいっていた。

水口氏が語る勝語録を読むと、勝新は、映画を観てくれる大衆のおかげで自分たちが存在できる。そもそも役者なんていうのは、もともと士農工商に入っていないんだと。「役者だからと偉ぶるな。一般の人こそが偉いんだ。」と常々言っていたという。

 また、役者の演技というのは、普段のライフスタイルが現れる。舞台の上でなく普段の生活が勝負だと釘を刺していたという。藤山寛美さんが座員たちに「舞台は楽屋やで」と言っていたことに通じると水口氏は述懐している。

勝新さんのライフスタイルは豪放磊落で一見放蕩三昧と誤解されるかもしれないが、この本を読んで、それらは全て「演技」の研鑽のためであったということがよくわかった。

 実は、私の妻が時代劇ファンで、座頭市の演技などを見て、もうこのような役者さんは二度と現れないだろうと普段から言っていた。

 また、この本で知ったのだが、座頭市はキューバでも大人気であるそうだ。

不出世の天才、勝新太郎。毀誉褒貶は世の常。ある時は無頼漢にも見え、放蕩三昧にも見えるライフスタイルは、実は、すべて「芸のため、演技のため」究極のプロ意識を感じた次第である。

 やや残忍性を感じ、苦手な方も多いかもしれないが、「座頭市」などの不出世の天才の演技を味わってみるのも一興かと書いてみました。

 

 

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