マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや(寺山修司)
マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや(寺山修司)
洞窟に隠れ戦争責任を必ずしも負わなかった高天原の神がいたとかいなかったとか。
おそらくは、壊滅状態の件の原っぱ。
祖国を失ったような荒涼たる気分がしないでもない。
そんな神々の犠牲となって散華したといえるかもしれない若者
時々、反芻する、穴沢利夫氏の手記。
恋人のマフラーを首に巻いて、23歳の若さで特攻に散った穴沢利夫少尉
穴沢少尉が出撃を目前にして書いた手記(下記)が、一時期、知覧特攻平和祈念館の展示室にあった。
私が知覧に行ったときには、穴沢氏の手記は展示されていたが、別の手記であった。
~夕べ、大平、寺沢と月見亭に会す。
憶良の「酒を讃える歌」を思い出す。たまにはよきものなり。
春雨が降るからとて何もセンチになる必要はないぢゃないか
今更センチになるお前でもあるまい
明日、明後日のいのちぢゃないか
愚かな、もの思いはよせ
心の隅でいくらこのような声がきこえても、やっぱり俺は感傷の子さ。
しっとりと雨に濡れる若葉の道を一人歩いてみれば、
本燃の性格が心の中で頭をもたげてくる。
忘れて了ふには余りにも惜しい思い出の多くが俺の性格のかげから一つ一つ覗き出る。
過去のない男、世の中にそんな男があれば春雨も降りはしまい。
若葉も南国の春を伝へまい。~
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荒涼たる高天原は横において、こんな素敵な先輩が散華した祖国。
やっぱり誇りに思いたい。