広島サミットの虚々実々 | 加納有輝彦

広島サミットの虚々実々

広島サミットの虚々実々

岸田首相の大きな目的として、ウクライナ紛争により、機運が下がってきている「核兵器のない世界の実現」を平和都市広島サミットを機に、反転攻勢させたいということだった。

 しかし、一部識者が指摘しているように、今回の広島サミットは、ウクライナで始まりウクライナで終わった感がある。

ゼレンスキー大統領、戦時下の大統領が、広島サミットに電撃訪問し参加したというニュースが世界を駆け巡った。

 これは議長国日本も、ゼレンスキー・フィーバーで、「G7首脳宣言」がかき消されることを恐れ、ゼレンスキー大統領の来日前に、「G7首脳宣言」を前倒し発表した事でもわかる通り、想定していたことではあった。

岸田首相が、世界に向けて発信したかった「核兵器のない世界の実現」への決意は、「G7首脳宣言」の中では、「核兵器のない世界実現へ向けて、現実的で実践的なアプローチで『核兵器のない世界』の実現に取り組む」と、現実的、実践的アプローチという表現に着地した。

何ら具体性のない抽象的決意である。
「一生懸命勉強して、立派な大人になります。」子供の将来の希望とあまり変わらないものである。

ようは各国が、広島サミット後、どう取り組むかに委ねられた。

一方で、ウクライナに始まり、ウクライナに終わった広島サミットでは、G7各国が、ウクライナをさらに一丸となって支援していくと確認された。

バイデン大統領は、F16戦闘機の操縦訓練をウクライナ兵に対して行う等具体的支援を約束した。

「G7首脳宣言」は仲介役になろうとしている中国に対してもメッセージを出している。
曰く、ロシアに対して『ロシアが即時に完全に無条件に撤退するよう圧力をかけることを求める』

 ロシアにとっては、200%受け入れられない最後通牒である。

「ロシアの核の脅威に晒されている立場」のゼレンスキー大統領を招いての広島サミットとしては、100%ウクライナ支援の立場ゆえ、最後通牒は自然の成り行きであろう。

 いずれにしても、G7各国が、今後、広島サミット首脳宣言の精神を生かし、政策変更をし、核戦争を抑止する具体的ステップを採ったなら、つまり、ウクライナ戦争を停戦させ、核戦争を未然に阻止するのなら、広島サミットの意義はあるのだろう。

 しかし、現在ただいま、矛盾を抱えている。

ロシアに対し最後通牒を発信し、さらにウクライナを支援するというのである。
ロシアが無条件降伏?しない限り、戦争は継続されることになる。

そしてそれが皮肉なことに核戦争の危機を増大させる。

 岸田首相が夢想する「核兵器のない世界の実現」が、蜃気楼の如くさらに遠のく。

幸福実現党は、故安倍首相に対し、ずっと主張してきたことは、日本は対中包囲網のメンバーとしてロシアを引き入れ、そのために「日露平和条約」を早急に締結し、日本の安全保障と共に、アジアの安全保障を確立することが必要というものであった。

平和条約を締結する上で、障害となる四島返還は、とりあえず棚上げしても、日本の安全保障のために条約締結を優先するべきと考えていた。それほど安全保障上の危機に日本はいるのである。

ロシアと組めば、中国、北朝鮮の核を無力化できたのである。

 ウクライナに対しては、「中立」を守ってさえいれば、このような戦争は避けることができたという立場である。

 ウクライナの平和を維持してきた「中立」という均衡を意図的に破ったのは、アメリカである。(マイダン革命、オデッサの悲劇、だまし討ちとしてのミンスク合意等々)
アメリカが主導して、中立を破らせNATO側に導き、つまりウクライナ戦争に導いたのである。バイデン大統領が、オバマ政権下、副大統領時代から、中心的に関わってきた。

 ウクライナ戦争を背後から操るバイデン大統領、そして、広島、長崎原爆投下に対して決して謝罪しないアメリカ大統領、としてのバイデン大統領。

 バイデン大統領の御用聞きの岸田首相が、「核兵器のない世界の実現」を真剣に唱えれば唱えるほど、空しく響く。いや、滑稽にさえ見えてくる。

 このあたりの欺瞞を、被爆者は敏感に悟る。
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「サミットは大きな失敗」 被爆者サーローさんが批判(共同通信)

 広島で被爆し、カナダを拠点に核兵器廃絶を訴えている被爆者のサーロー節子さん(91)は21日、広島市で記者会見し「G7広島サミットは大きな失敗だった。首脳たちの声明からは体温や脈拍を感じなかった」と批判した。「原爆資料館で何を感じ、何を考えたのか。その声を聞きたかった」とも指摘した。

 (中略)
 ウクライナのゼレンスキー大統領の出席に関して「武器支援のことばかりで、話し合いによる解決策が聞こえてこない。広島でそうした話をされるのはうれしくない」と複雑な心情を吐露した。

 (後略)
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「武器支援のことばかりで、話し合いによる解決策が聞こえてこない。」
普通に考えて、その通りではないか。
本来、日本が、停戦のための仲介役を果たすべきであった。
 御用聞きに成り下がったのは、まことに残念である。

 原爆によるジェノサイドは、ダメだ。(過去の原爆投下は、オーケー)

しかし、通常兵器による殺戮はオーケー。今後も続ける。

 私、個人的には、これが今回の広島サミットの隠れたメッセージであった。

※それにしても「中立の立場」を守ったインド、モディ首相の存在感が光った。
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広島原爆記念館の訪問にもたいした感想をのべず、日米豪が期待するクアッドでもインドの積極姿勢を期待したが、モディは慎重に対応した。ただし2024年のクアッドは印度開催が決まっている。:「宮崎正弘の国際情勢解題」 令和5年5月22日
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