大きな窓から差す木漏れ日のなか、掃除の行き届いた清潔な食堂でゆっくりと頂く朝食。
みんなでワイワイ言いながら食べる楽しい朝食。
小麦の香りが匂い立つ焼きたてのパンや、プリプリのソーセージにピカピカの黄身が食欲を湧き立てる目玉焼き、香ばしい挽きたての豆の香りが充満する温かい珈琲。
入学前に夢見ていたそんな泡沫(うたかた)の幻想が一瞬で崩れ去った寮生活初日の朝。
まず朝礼から大声で掛け声をかけながらのランニングで着いた食堂。入り口で先に入ろうとした瞬間、別の部屋の二年生、野球部の強面ヤマさん(仮称)に、
テメェ~!
ナニ上級生より先に入っとるんじゃ~!
何様じゃ、テメェは~!
オゥ???
一年は横にどいて、
「お先にどうぞ!」
と後ろから鋭いケリを入れられ指導が入った。ここではメシの時もやはり独自のカースト制度に従うのが常で、一年生は入り口の脇に小走りで避けて直立不動から90度にお辞儀して、
お先にどうぞ!
とハッキリと明瞭な声で上級生を出迎えなければならない。声が小さかったり、お辞儀が中途半端な40度ぐらいの角度なら即その場で鉄拳制裁と相成る。まるで将軍様や大名行列の時に通り過ぎるまで土下座する町人や農民???横切ったら斬り捨て御免......みたいな(笑)。
そしてそんな思いをして食堂に入るとすぐに奴隷の次の仕事が待っている。席は同じ寮の部屋が2~3部屋一緒に座って食べる。部屋によっては単独で食べる部屋もあるが、我々は部屋長同士仲のいい5番室と4番室が合同で食べることに。そして、食堂ではセルフサービスなのでトレーにオカズや茶碗、湯呑などを置いて席まで運んで食べる方式。ゴハンは丁度ひと部屋人数分ぐらいが入れられてる御櫃(おひつ)を席まで持っていって手分ける。お茶もヤカンに入ってるのを席まで運び各々入れるのだが、3年生は手ぶらで席に着いて横柄な態度でふんぞり返って膳が運ばれてくるのを待ってるだけ。2年生は自分で取って運ぶので、3年生の分は奴隷の1年生が手分けして席まで運んで用意することになる。
*こんなイメージ(笑)
それもサッサと手際よく用意しないと朝から無理やり起こされて超ご機嫌ナナメの3年生たちがご機嫌を更に損ねることになる。それは奴隷にとって即ち、死に値する(笑)。なので必死のパッチで小走りでゴハンを茶碗に盛り、お茶を注いで膳に運ぶのだが、ここでもまた2年生の指導が入る。
何じゃ~
このメシの盛りかたは???
ご飯粒が潰れとるじゃないの、オゥ?
テメェ、
メシの入れ方も知らんのか!(怒)
もっと美味そうに盛らんかいっ、おぅ?
とやり直しを命じられ(泣)。そしてメシ食ってる時でも奴隷は常に上級生様の様子を気にしながら食べないといけない。というのは、上級生様がゴハンやお茶のお代わりを所望したら、ダッシュで受け取りにいきすかさず入れてお持ちしないといけないのだ。しかし朝5:30に起きて蹴られて走らされてただでさえ思考が回ってない状態なのでどうしても見逃してしまうことが度々ある。そうすると例えばお茶のお代わりの場合、湯呑でテーブルを コン!と叩く。これはまだイエローカード、睨まれて舌打ちされるだけで済むのだが、これが2~3回、コン!コン!と音が鳴るとレッドカード!湯呑が我々目掛けて飛んでくることになる(怖!)。
なにボサッとしとるんじゃ~!!!
弛んどるんじゃ、おのれら~!
と一瞬にして恐怖の朝食会に(笑)。
まるで映画「アンタッチャブル」のアル・カポネの食事会みたいな恐怖感(笑)。
なので常に戦々恐々とした雰囲気のなか朝メシを頂くのだが、こんな状態ではまともにメシ食えず、3年生はサッサと食い終わって席を立つので奴隷はまだ食事中であろうが一緒に退席して今度は3年生の膳を片付けてテーブル拭きまで終わらせないといけないのだ。
朝からこんな感じで1日が始まるわけだが、心弱い奴はそう長くは持たない。下手したらノイローゼになって脱走する奴もいて。まあそんな奴の話はまた後日に(笑)。そうして朝メシもようやく終わったと思ったら、次はダッシュで寮まで戻り、登校するまでに奴隷はまた次の仕事が待っているという......
*次回に続く.........