2006年に、CCTVの超人気オーディション番組「星光大道(スターへの道)」に於いて、京劇女形姿で素晴らしい喉を披露して3位に食い込み、その後国民的スターになった李玉剛 (ユゥガン・リー)をご存知だろうか。
ぱんさーママと親子二代で歌舞伎の女形坂東玉三郎丈のファンである桃豹は、中国の伝統劇京劇も好きである。
李玉剛 の日本公演にはお玉さまも観劇し、その優美な姿と玉を転がすような美声に魅せられたという。

京劇は、18世紀後半(清・乾隆年間)に中国安徽(あんき)省で興り、北京を中心に発展した歌劇の一種である。1603(慶長8 年)に出雲阿国が始め、その後江戸期に発展を遂げて今に至る日本の歌舞伎に比べると、200年ほど歴史が浅い。
北京に元からあった演劇は安徽省の劇団に食われ、1820年代終わりあたりには漢調の湖北劇団が進出するようになると、それまで南方方言だった演劇は、北京語で演じられるようになる。更に太平天国の乱などで南方が政情不安に陥ると、南方にいた劇団はこぞって北京に集中するようになる。

西太后・同治帝・光緒帝の時代は、京劇にとって将に黄金期で、時の権力者に庇護されて多くの名優を輩出する。
更に清代末期には、初来日公演した四大名旦(四大名女形)の一人である梅蘭芳(メイ・ランファン)らにより、京劇は一層洗練され、「国劇」と呼ばれるようになり、2010年にはユネスコの「無形文化遺産」に登録された。





梅蘭芳(メイ・ランファン)



李玉剛 は舞台女優を母にもち、幼い頃から女形の芸を身につけたという。若いときは貧しく、レストランで働きながら芸を磨き、2006年に世間の脚光を浴びるまでは長い下積み時代を過ごした。
彼の物腰の柔らかさや穏やかな表情は、女形のシナゆえではなく、長い労苦の時代を乗り越えて見事に花開いた者のもつ品格に裏付けられている。



左右は同一人物ww



李玉剛 の魅力は、京劇女形の得も言われぬはんなりした風情、ファルセットを駆使した独特の歌法。そこにポップスの要素がうまくマッチして、老若男女を問わず多くの人々を魅了した。
男声と女声を織り交ぜた哀愁に満ちた玲瓏なる美声。稀代の女形である梅蘭芳を凌ぐとさえ言われる美しい所作。特に手指の動きの美しさには、実にうっとりさせられる。
京劇が最も華やかだった清代を髣髴とさせる、夢のように華やかな舞台は一見に値する。




声も姿も所作も将に女性
しかし…よくぞここまで変身できるよな(ーー;)



その後、順調に芸能活動を広げ、2008年に国連から「世界調和大使」称号を受け、翌2009年に中国人としては民謡歌手の宋祖英(ソン・ツーイン)に次ぎ、2番目にシドニーオペラハウスでリサイタルを行い、中国歌劇舞劇院として認定された。
更に2010年にはワールドツアーで来日し、東京芸術劇場でコンサートを実施。
2012年と2013年には、CCTVの年越し番組「春晩」に連続で出演し、絶大な人気を博している。
日本で言えば、人間国宝の歌舞伎女形が国営放送の紅白歌合戦でも大活躍といったところか。

李玉剛 の代表曲と言えば、「新貴妃酔酒」だ。
ディマシュとの面白いコラボがあったので、お愉しみ戴きたい。声質はディマシュより透明感があるが、声量では負けてしまう。(ディマシュの声のデカさには定評ありww)



ディマシュは童顔だが、李玉剛は更に年齢不詳ww
ディマシュより16歳も上だとは…(;^ω^)
今年、ディマシュ29歳、李玉剛45歳であります





しかし、桃豹的には李玉剛 の繊細な声質を存分に愉しめる「雨花石」が、断然好みである。
高音と低音、両方とも素晴らしく艶があり伸びがよく、つい聴き入ってしまう。
よい歌というのは言語圏に関係なく、そのまま脳裏に深く沁みわたる。歌ならば、別段聞き慣れた英語でなくても構わない。北京語だろうがロシア語だろうが、美しい音の流れがさらさらと入ってくるゆえ、まずは耳から抵抗なく取り入れられる。
次いで、歌詞を文字確認して大意を汲み取り、更に深く知りたければ、その歴史的背景や文化などにも興味を抱く。学問は分野毎に独立するのではなく、各々リンクしているからだ。    
ま、何処の国の誰が歌うものでも構わないから、まずはお気に入りの曲探しあてて、そこから入るのが
一番お手軽な学習にはうってつけではないだろうか。
え〜ご嫌いな中高生諸君!心に響く曲に早く出逢って欲しいものである。