新桶職人復活プロジェクト | 食 de まなぶ

食 de まなぶ

食べものを通しての人との出会いや発見がいっぱい♪
パン屋さんと発酵食のお仕事をしているYukariの日常日記です。

暑い8月の夏に私は小豆島に行きました。

それはたった一つの目的の為

新しい杉桶を作るプロジェクトに立ち会うことでした。


とにかく食に関してのお仕事をしてきて、一番感動したのが

日本の醸造文化です。

発酵の魅力に取りつかれ、「行きたい」という衝動が抑えられず

勢いで小豆島に足を運びました。

見学している中で、手伝いたい!という気持ちが大きくなり

出来る限りお手伝い出来ることはさせてもらうことができました。

勢いで生きている私ですが、そんな私を広い心で受け入れてくれた

そんな優しい方々です。




食 de まなぶ


本日21:00からNHKBSにて「新日本風土記」という番組があります。

今回小豆島が取り上げられ、このプロジェクトについても大きく取り上げられます。ぜひお時間がある方は、見てみてください。


↓はプロジェクトについてと、少し参加した体験談を書いたものです。


今では全国に3人しかいない桶職人。

桶の需要もなく、技術が失われつつあります。


そんな中、「孫の世代まで桶作りの醤油を残したい」という思いから小豆島の醤油蔵ヤマロク醤油の山本さんが動き出しました。

2012年大阪堺の藤井製桶所に山本さんと同級生の大工さん2人が足を運び、桶作りを学びに行きました。職人の世界ですが、いずれ自分たちで桶が作れるようにと。

2013年山本さんと大工お2人(坂口さん、三宅さん)らがプロの職人さん抜きで新桶作りに挑みました。

杉の鉋削り、箍(竹の部分)編み、それらは一度経験しながらもいざ自分たちだけでやってみるとなかなか上手くいきません。竹は寒い時期に切ったものを徐々に加工していったもので、時間が経っていたため、水分が抜けて割れやすくなっていました。さらに竹は一部虫に食われていて、割れやすく強度もないため使えないものも出てきました。やっとできた箍も合わせてみるとサイズが違いやり直し。はめてみた箍も小さすぎて所定の位置まで入らずやり直し。そんな手探りの作業が続きました。

箍をはめる作業も一人の力では難しく、箍に木を当て、木をハンマーで叩いて入れていきます。34人の力が合わさって初めて少しずつ動き出します。本当にタイミングが揃ったときにガッと箍が入るのを感じるのを経験して、「一人の力が強くても限界があるんだな」「小さな力でもタイミングが合わさると大きな力になるんだ」という理屈でしか分かっていなかったことを実際に体で体感することができました。

箍を7本裏返した状態からはめて、底の淵に金具を付けます。昔は転がしながら移動させていたので、桶底が傷つかないようにとはめていたそうです。その後、桶を反対にしなければなりません。全て人力でまずは横にし、そこから転がすように立てました。次は未経験の底板を入れる作業。底板は厚く、実は側面は真っ直ぐではありません。桶の底に向かってしぼんでいくのに合わせ、下に向かって円が小さくなるように削るのです。その作業は大工2人に託されました。いくら器用な醤油職人山本さんでもミリの世界で精密に斜めに削っていく技術はありません。大きくは機械で、でもほとんどを手作業で削っていく姿をみんなでじっと見守ることしかできませんでした。

いよいよ底を入れます。でも、未経験。みんなで考えました。上手くというか若干無理矢理底を入れる事に成功し、次は底を打ち入れる作業。打ち込む道具も前日に作りました。その長さ、大人2人分。桶の脇に2人、底に2人で声を掛け合い打ち込んでいきます。蔵に打ち込む音が響き渡ります。上手く底が予定の位置まではまった時には作業している4人、手伝ってきた人たち、見学や取材で来ていた人たちが一斉に声を上げて喜びました。

昔丸金醤油で桶職人をしていた方と山本さんのお父様が「本当に自分たちだけで作りおった。たいしたもんだ。」と言っていたのがとても印象的でした。

底に文字を入れ、全て終わったかのように思えましたが、桶に水を入れてそれが一転、水漏れが発覚しました。それまでの喜びのムードが真剣に考えるムードに変わりました。桶の水漏れは通常です。杉が水分を含み膨らむため隙間を埋めてくれます。しかし、今回は漏れては行けない場所だったことが問題でした。その後、漏れの原因(底入れの際に開けた穴)が発覚し、補修したとのことでした。それが確認でき、やっと完成です。

この桶は2017年販売予定。