今シーズンのチューリップ圃場から 早生系統編 | 見習いブリーダーの交配台帳

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単なるパンジーとチューリップの「愛好家」

シーズンの振り返り。
早生の品種を中心に。


‘ページポルカ’
手前で開花している2列と、真ん中あたりの蕾の2列、実は両方ともページポルカです。

近年、毎年のようにこの品種は半数以上の株がブラインドを起こして蕾が潰れてしまっていたので開花期にポツポツしか咲きませんでした。
遺伝的に開花不良の個体があるのかと思い、昨年初夏に咲いた株とブラインドの株を分けて掘りあげて秋に別で植えたところ、何故か今春は全株が蕾を付けたのですが前年開花しなかった個体群の方が早く咲きました。
これは蕾ができなかったことで花芽形成が早まってしまったので開花も早まったことに起因していると思います。

初めて見た現象です。

‘ゴールデンドラゴン’
トライアンフ系として2018年に登録されましたが、草姿や球根の様子、また早生性から見て限りなくダーウィンハイブリッド系に近い、もしくはダーウィンハイブリッドそのものだと思います。
植える位置を変えるかどうか悩み中。

‘ホラントベビー’(ホーランドベイビー)
八重早咲き系
親品種のスカーレットベイビーは割と細弁で全体にほっそりとした花形ですが、スポートのこちらは溢れるように咲く豪華な八重です。

愛好家の方に無理を言って譲って貰った数々の球根のうちの一つ。
今シーズン導入です。

‘ザンパパロット’

パロット咲き。
かつて数年間広く出回りましたが、その後は全く流通していません。
私も最後に育てたのは10年以上前のことです。
グレイギー系のスポートなので性質は強く、各地で生き残っているものを何件か見たのですが、今回球根をいただいて久しぶりに再会しました。
驚くべき豪華な花容です。 

‘コニャック’
八重早咲き系。
掘り取り販売の抜き苗1本から養成2年目。ここまで増えてきました。

‘ルノワール’
八重早咲き系。
ムリロの派生品種のひとつで、商業的には淘汰された古い系統の品種です。
極矮性で茎も強くなく、花持ちも長くありませんが独特の雰囲気があります。
個人輸入してから3・4年増殖につとめていますが、初年度の輸送ダメージを引きずってまだ1列分くらいにしかなりません。


‘クンフー’のスポート2種
上は覆輪が広くなったもの。下は赤単色になったもの。増殖2年目?ですがそろそろ1列分を超えそうで生育も軌道に乗ってきたので来年か再来年にはコレクション列に組み込めそうです。

‘スピネル’
八重早咲き系。こちらもムリロの派生品種。

‘アガカーン’(アーガーハーン)
八重早咲き系。
数年養成してようやく3輪(^_^;)

‘コテージボーイ’
一重早咲き系。
白とピンクの‘コテージメイド’という古名花から生まれたもので、こちらも貴重な品種です。

‘モンセラ’
八重早咲き系
かつてはよく出回っていましたが親品種のモンテカルロと同様にパタりと出回らなくなりしばらく入手出来ませんでしたが偶然手に入ったものを少しづつ増やしています。
昨年は大きい株が腐敗したりしてヒヤヒヤしましたが…

‘ダクファントール サーモン’
(ダックファントルサーモン)
一重早咲き系(ダクファントール系)
他の同系統品種は割と順調に増えて今年は余剰が出そうなくらいですが、こちらはかなりゆっくり。
草姿はややしっかりしていて現代品種のような大型化する変遷の途中にあるような感じ。
 
‘ヘールプリンス’
一重早咲き系。
ヘール(gele)はオランダ語で黄色という意味。
未だに色表記などによく書かれています。
古品種で出回りはなく、4年前に個人輸入したものです。
かつてはこれにド派手な斑入り葉になったスポートが主にヘールプリンスとして紹介され日本国内の園芸書にも白黒写真が載っているのですが、それは現存していないと思われます(オランダ現地のコレクターには持っている人がいるかもしれません)。

同時代の本には‘ローズルイサント’や‘コチニールレッド’というのが斑入り葉の品種としてあちこちに記載があるのですが、実物は全く残っていません。
広く知られている品種であっても消えるのはあっという間です。もし栽培を続けている人がいたら今でも実物を見ることも育種に使うこともできましたがもう叶いません。
これこそが品種保存する意義と考えます。